オフサイド・トリップBACK NUMBER
FIFA騒動の行方を左右する3大要素。
会長選、開催地、未公開の報告書。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2015/06/25 10:40
ヨルダンのアリ王子はワールドカップの出場国を36に増やすことなどを公約にして会長選に出馬し、ブラッターに敗れた。次期会長最右翼とも言われるが果たして……。
未公開の「ガルシアレポート」の全容は?
最後は「オデッサファイル」的とでもいうべき調査報告書、通称「ガルシアレポート」が、いつ、どのような形で公表されるかだろう。
ガルシアレポートとは、FIFAの倫理委員会において調査部門のリーダーを務めていたマイケル・ガルシアが、2014年の9月に提出した報告書を指す。このレポートは350ページにも及ぶもので、アベランジェやブラッターに関する事柄や、2018年と2022年大会の招致活動の実態も克明に調べ上げられているとされる。ところが調査を命じたはずのFIFA側は、「法的な理由」でレポートの全文公開を拒否。代わりに42ページの圧縮版を再提出し、2018年や22年大会の招致に活動における不正はなかったと主張した。
圧縮版の内容を不服としたガルシアは倫理委員会を辞任。ブンデスリーガ会長のラインハルト・ラウバル博士(ボルシア・ドルトムントの会長も兼務)も、全文が公開されなければUEFAはFIFAからの脱退も検討すべきだと提言するまでに至った、いわくつきの文章だ。
ガルシアレポートは、スイスの地検当局の捜査資料になっているという理由で未だに公開されていない。だがFIFAスキャンダルの全容を解明する上で、レポートの公開が決定的な転換点となるのは間違いない。
日本を含めたAFC諸国はブラッターに投票したが……。
では日本は、今回のスキャンダルから何を学び、未来に向けていかに舵取りすべきなのか。導きだされる答えは、きわめてアンビバレントなものになる。
自らの責務としてサッカー界の透明化や正常化を積極的に働きかけつつ、他方では、レアルポリティーク(現実政治)やマネーゲームの中で生き残っていく術を見出していかねばならないからだ。
一例を挙げよう。たとえばメディアの中には、日本が5月の会長選挙でブラッターを支持したことを批判する声もある。そのような行動こそが、FIFAの改革を妨げてきたというのが根拠だ。
しかしAFCの意向に反して反ブラッターに票を投じていたならば、AFC内における発言力が低下していたであろうことは容易に想像できる。またAFC諸国がブラッターに票を投じた結果、現実問題としてアジアはW杯の出場枠4.5を確保することにも成功している。
アジアの枠については、そもそもの基準が緩すぎるという意見もある。だが日本のW杯出場がかかることもあり、出場枠が維持されてほっと胸を撫で下ろした方も多かったのではないか。
「日本代表の強化には、アジアのレベルを上げるのが不可欠になる。そのためには出場枠が減り、本大会に出場できる可能性が少なくなってもやむを得ない」とまで割り切って考えるなら話は別だ。しかし、そこまで腹を括って断言できる人を、私はあまり知らない。