オフサイド・トリップBACK NUMBER
FIFA騒動の行方を左右する3大要素。
会長選、開催地、未公開の報告書。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2015/06/25 10:40
ヨルダンのアリ王子はワールドカップの出場国を36に増やすことなどを公約にして会長選に出馬し、ブラッターに敗れた。次期会長最右翼とも言われるが果たして……。
次期会長候補の1人は、カタール近隣国ヨルダンの王子。
たとえば5月末の会長選挙では、プラティニの支持を受けたヨルダンのアリ王子が、ブラッターの対抗馬となっている。アリ王子は、次に述べる「ガルシアレポート」の公開を求めるなど、腐敗の一掃に意欲的だったからだ。
とはいえ、アリ王子が会長選に再出馬して当選し、かつ大会招致の疑惑が明らかになったとして、中東の近隣国であるカタールにNoと言えるのだろうか。ましてやアリ王子を担いだプラティニは、カタールと関係が深かった。
このプラティニの動向は、アリ王子以上に興味深い。プラティニは、たしかに反ブラッター派の急先鋒となってきた。またUEFAの会長としてフィナンシャル・フェアプレーを導入したり、EUROの分散開催を推進するといったようなラディカルな民主化を行ない、強豪国やビッグクラブに富と権力が集中する状況に終止符を打とうとしてきた。
プラティニとて醜聞と無縁の存在ではない。
だがプラティニを聖人君子のように捉えるのは適切さを欠く。彼は改革の旗手であると同時に、きわめて政治的な人間である。しかもよりによって、カタール絡みの醜聞とも無縁ではない。
中でも、2013年1月に「フランス・フットボール」が報じたスクープは実に生々しい。「カタールゲート」と題された記事には、2022年大会の投票を巡ってサルコジ大統領、当時のカター皇太子、当時のPSG会長、そしてプラティニが一堂に会し、密約が交わされたとある。プラティニは密約の存在を真っ向から否定したが、彼がカタールに投票したのは紛れもない事実だ。
にもかかわらずサッカー関係者の間では、プラティニこそが会長選に立つべきだという声が強い。UEFAの影響力や政治的な手腕、これまでFIFAの改革を訴えてきた経緯を考えれば、プラティニが立つのが自然だからだ。
カタールの不正が判明した場合、プラティニはいかなる釈明をし、同国との関係をどう清算するつもりなのか。そもそも彼ほど計算高い人間が、FIFAの会長などという、ある意味では小回りの利かなくなる立場に就くのか。いずれにしてもプラティニの出方は、サッカー界の全体の未来を大きく左右する。