松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
「もったいなかったなと思うけど」
松山英樹、全米のダボは次のために。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byJun Hiraoka
posted2015/06/22 16:15
世界最高難度ともいわれるコースで、松山英樹もグリーンに苦しんだ。ショット貢献度に比べてパット貢献度が低いというのが課題なだけに、修正が期待される。
同組のアダム・スコットは6つ伸ばすチャージ。
72ホール目。ドライバーで放ったショットは、フェアウエイ左サイドのバンカーにつかまった。慎重にフェアウエイへ出し、3打目で見事にピン2メートルを捉えると、グランドスタンドを埋め尽くした1000人超の大観衆から割れるような拍手と歓声が巻き起こった。
だが、バーディーパットは最後まで入らず、ラストホールもパー。イーブンパーのラウンドは、猛追が求められた最終日の松山を首位から遠ざける効果しかない。首位との差は8打へ開き、松山の3度目の全米オープンは18位で終止符となった。
首位と7打差の19位という同じポジションから最終日をスタートし、松山と同組で回ったアダム・スコットは、苦しむ松山を尻目にスコアを6つ伸ばす猛チャージ。終わってみれば、スコットは首位と2打差の4位に食い込んでいた。
その位置、いやそれ以上の位置に松山が立つことだって可能だったのだ。彼が前日、「無くはない」と信じたことは、間違いではなかったのだ。しかし、その可能性、そのチャンスを、彼はモノにすることができなかった。
「ダボとか打ってるようじゃ、話にならない」
「残念です」
日本メディアの前にやってきた松山は、開口一番、短い一言だけを口にした。何がどう残念なのか。そう問い返すと、彼は重い口を開き始めた。
「ショットは、アダムと遜色ないぐらい、いいショットが打てたと思うけど、そのあとの、パッティングとグリーン周りで、すごい差を感じた。上位に行く人、優勝が狙えるところでフィニッシュする人と、下のほうで終わる選手の差を感じた」
生々しい悔しさを噛み締めていたせいだろう。自虐的な言葉が松山の口をついて出た。追いかける立場にありながら、最終日の6番で喫した4パットのダブルボギーは、そりゃあ、手痛いものだった。
「ダボとか打ってるようじゃ、話にならない」
そう感じるのも無理はない。
けれど、あのダブルボギーこそは、最終日の松山の分岐点だったように思う。