松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
「もったいなかったなと思うけど」
松山英樹、全米のダボは次のために。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byJun Hiraoka
posted2015/06/22 16:15
世界最高難度ともいわれるコースで、松山英樹もグリーンに苦しんだ。ショット貢献度に比べてパット貢献度が低いというのが課題なだけに、修正が期待される。
珍しく、松山がアドレスを解いて仕切り直した。
サンデーアフタヌーンの午後1時。1番ティに立った松山英樹はドライバーを握り、アドレスに入った。
そのとき、観衆の群れの中から笑い声が聞こえてきた。その声で、松山はアドレスを解き、仕切り直した。
珍しいな――。そう、松山が仕切り直すのは、実を言うと珍しい。とりわけ今大会では、初日も2日目も3日目も、彼がアドレスを解く姿を見たことは一度も無かった。すぐ後方のグリーンで後続組の好打に大歓声が上がったときも、海岸線に沿って走るアムトラックがガタンガタンと音を立てながら走ってきたときも、彼はまるで何も聞こえていないかのように、アドレスを解くことなく、そのまま打った。
その恐るべき集中力に何度も驚かされた。だが、最終日はスタートホールで笑い声が耳に入り、仕切り直し。
それが何かの予兆に思えて、かすかに嫌な予感がしたのだが、仕切り直した後の松山は第1打を堂々とフェアウエイへ放ち、セカンドショットをピン2メートル半にピタリと付けて、バーディー発進。グッドスタートを切った。
乾き切ったグリーンは、難解なパズルのようだった。
ショットは快調だった。だが、ホールを追うごとにグリーンに翻弄されていった。晴天続きで乾き切ったグリーンは表面でボールがゆらゆら揺れるほど固く干上がり、微妙な傾斜、バンカーから跳ね上がった砂や石、いろんな要素が複雑に絡み合い、難解なパズルのようになっていた。
その謎めいたグリーン上で、松山は何度も何度も天を仰いだ。2番は2メートルのバーディーパットを外し、3番は3パットでボギー。4番では、ようやく2.5メートルのバーディーパットを沈めたが、5番は2メートルのパーパットを外し、再びボギーを叩いた。
そして6番。ピン奥20メートルからの長いファーストパットは2メートルもショートした。次なるパーパットは逆に強めに入ったのか、カップを50センチほどオーバー。マークをせずに、そのまま打った返しのボギーパットはカップに蹴られ、4パットのダブルボギーを喫した。
それでもなんとか気持ちを切り替え、8番でバーディーを奪い返すと、パー3の9番ではティショットをピン1メートル半につけて拍手喝采を浴びた。だが、またしてもバーディーパットを外し、10番も11番もバーディーチャンスを逃し、首位との差をちっとも縮められないまま、松山の最終ラウンドは終盤へと進んでいった。