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長谷部誠に提示された進化の契機。
繰り返した「工夫が足りなかった」。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/06/20 10:50
中盤ではほとんどシンガポールのプレッシャーを受けずにボールを持つことができた長谷部誠だったが……。攻撃にスイッチを入れることへの期待も大きい。
繰り返し口にした「工夫が足りなかった」。
「今日みたいな引いた相手の場合、縦へ速くというのが難しいのかなというのは、やっていても感じました。ただ、チャンスがまったくなかったわけでもないし、これで点が入っていれば、また違った印象になっていたかもしれないですけれど。
引いた相手に対して、どういう風にプレーしていくのか。たとえば相手をわざと引き出して、スペースをあけさせてということもあるだろうし。ただ今日に関してはなかなか点が取れなかったので、みんなが前へ前へという意識になっていたと思う」
シンガポール戦後に取材を短時間で済ませる選手も多い中、10分近く記者の質問に対応した長谷部。惜しいチャンスがありながらも、ゴールが決まらなければ勝てない。その悔しさは、「工夫が足りなかった」と繰り返す、彼の言葉の端々から伝わってくる。過去に何度も同様の展開で苦汁をなめてきた。だからこその不甲斐なさを長谷部自身も抱いていたに違いない。
「ブーイングは当たり前だと思う」
「(試合後のサポーターからの)ブーイングは当たり前だと思う。僕たちにとっても、こういうゲームで点が取れないというのは初めてではない。(ハリルホジッチ)監督では初めてかもしれないですけど。アジアカップでもそうだったし、W杯のギリシャ戦でもそうだった。
もちろん相手のオーガナイズされた守備も良かったと思います。ただ、その中でもこれだけのチャンスがあって、決められなかったというのは、もう何度もやってきたことなので。重く受け止めなくちゃいけない。もう少し何かが、最後の部分ですけど、足りないというのを痛感しますね。
前回のW杯予選初戦では北朝鮮に苦戦しながら、勝ちきれた。勝ちきれなかった今日とは紙一重の差なのか、大きな差なのか。もちろん、運もあると思うけれど、それを運で片づけずに、自分たちがそこをしっかりと突き詰めていかなければいけないと思う。
これからも、アジアを相手に戦っていくと、こういう(自陣を固める)相手が増えると思う。そういう意味では今一度、頬を叩かれたという部分がある。イラクは出てきてくれるチームだったので、自分たちがやろうとしているサッカーがやりやすかった。でも、今日のように引いてくる相手、しかもただ引いてくるのではなくて、かなりオーガナイズされたチームを相手に戦うためには、もう少しバリエーションというモノを持っていることが必要だとは思います」