サムライブルーの原材料BACK NUMBER
徹底管理がコンディション悪化に?
ハリル流の日本版を見つけて欲しい。
posted2015/06/22 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
攻めても攻めても、ゴールが遠い。
よもやのドローに終わった埼玉の夜。あれっ、これに近い光景を最近どこかで見たような……。そうだ、シドニーの地で見た5カ月前のアジアカップ準々決勝UAE戦を眺めた際、同じような感覚を持った。あのときは120分通して30本以上のシュートを放ちながら1点どまりでPK戦に敗れ、今回のシンガポール戦は20本以上のシュートを見舞って無得点である。
最後の精度の問題? 中を固める相手に「幅と深み」に目を向けず中央突破にこだわった戦い方の問題? それともシンガポールの守護神マフブドが当たっていたから?
どれも正解だと思う。しかしながら、筆者の脳裏にチラついたシドニーとの共通項は「コンディション」だった。
躍動感がない。頭の回転が遅い。
いくらシンガポールの守備が良かったにせよ、固めてきたにせよ、スペースを消してきたにせよ、世界ランクで100位以上の差がある相手である。目の前の一人を“はがす”個の力があるはずなのに、戦術の「引き出し」が経験値としてあるはずなのに、それを中途半端にしか表現できなかった。つまり心身のコンディションがベストでもベターでもなかったからこその結果であった。
アジアカップのUAE戦は明らかに「重い」感じが伝わってきた。先発を固定して4戦目、それも中2日。動きが鈍く、集中力を欠き、判断の部分が遅かった。最後の精度より、それが敗戦の主因だと筆者は捉えている。
2週間の準備期間があったが……。
今回は背景が違う。いくら欧州のシーズンが終わったばかりとはいえ、欧州組は2週間の準備期間があった。チーム全体でも8日に集合してシンガポール戦まで1週間以上あった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が細かくプログラミングして、熱心に取り組んだことはよく理解できる。しかし結果は出なかった。シンガポールのドイツ人指揮官ベルント・シュタンゲ監督は試合後の会見でこう言っている。
「日本代表のほとんどの選手が欧州での長いシーズンを終えたばかりで、疲れていただろうということ。シーズンが終わった直後で疲労感もあり、それによって集中力を欠いたのかもしれない。あるいは私たちを過小評価していたのかもしれない」
敵将の目には「疲労感」が映っていたのは間違いないことだ。