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スズキが22年ぶりの予選ワンツー!
接戦を生むMotoGPの“ハンデ”制度。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/06/21 10:40
今季一番の成績を見せ、祝福ムードに包まれたスズキチーム。フラットな状況での勝利を彼らも望んでいるはずだ。
独自の電子制御ユニットを使うチームにハンデが。
ワークスマシンと呼ばれる「ファクトリー・オプション」とプライベートチームが使う「オープン・カテゴリー」のマシンの違いは、ECU(電子制御ユニット)のソフトウエアである。
ハードウエアは両者とも同じだが、独自のソフトウエアを採用するのが「ファクトリー・オプション」で、支給される共通ソフトウエアを使うのが「オープン・カテゴリー」。
その差は歴然で、「ファクトリー・オプション」が圧倒的に速い。
そのため「ファクトリー・オプション」にはハンディキャップが課され、使えるエンジンがシーズン5基までで、シーズン中の開発は禁止。決勝で使える燃料は20Lまでとなる。
対して「オープン・カテゴリー」は、ワークスマシンの年式落ちを使うのが今年の主流。
ソフトウエアは共通のものだが、使えるエンジンはシーズン12基で開発は自由。燃料は1.2倍の24Lだ。
さらに「オープン・カテゴリー」は、「ファクトリー・オプション」より1ランク柔らかいタイヤを使える。
いまやファクトリー・オプションのバイクは8台だけ。
ということで、現在「ファクトリー・オプション」のルールで参戦しているのは、ホンダとヤマハのそれぞれ4台だけ(ファクトリー・オプションは1メーカー4台までと規定されている)。
ドゥカティ、スズキ、アプリリアは、「ファクトリー・オプション」ながら、「オープン・カテゴリー」の条件で出場できるという恩恵が与えられている(燃料に関しては細かい規定があり、何度も表彰台に立っているドゥカティは22Lになっている)。
となると当然、実際どのくらいの差があるのか? という疑問が浮かぶ。
「オープン・カテゴリー」に許されたエンジンの運用方法は、「ファクトリー・オプション」とは“雲泥の差”であり、さらに燃料をいっぱい使えてパワーを追求しやすい。
そして、1ランクソフトのタイヤが使えることで、同じバイクなら0.5秒前後は速くなると言われている。