サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ハリルも悩む日本の“真ん中フェチ”。
逆襲のキーワードは「横に速く」!?
posted2015/06/17 11:20
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Takuya Sugiyama
雀百まで踊り忘れず。もう、癖というか、習性というか、性癖に近いものなのだろう。日本代表攻撃陣のポジショニングのことである。6月16日のシンガポール戦前半の攻撃は、日本が引いた相手と対峙した際の見慣れた光景だった。
中へ、中へ、それでも中へ。目指せバルサ。どんなに狭いエリアでも、ショートパスの連続で崩しきってやるぜ。選手たちのそんな声が聞こえてきそうなほど、本田圭佑が、香川真司が、宇佐美貴史が、4-1-4-1のシステムでゴール前を固めるシンガポールの守備ブロックに向かって突撃していく。
いくら日本のほうが技術で勝っていて、ショートパス攻撃が得意でも、あれだけの人垣をすり抜けていくには、パスのタイミングとコースがぴったりと合って、しかもそれが2~3本続かなければ、フィニッシュには持ち込めない。この日も強引なワンツーを試みては、シンガポールの選手が伸ばした足にボールが引っかかる。もしくは、オフサイド。
“バルサ風”に、どうにかフィニッシュまで持ち込んでも、残念ながら日本にはメッシも、ネイマールも、スアレスもいない。30分に長谷部誠→本田→宇佐美とつなぎ、岡崎慎司が放ったシュートはシンガポールの守護神、イズワン・マフブドに弾き出された。前半、細かなパスワークによる中央突破で決定機を迎えたのは、このシーンだけだった。
ザックも「外に張れ」と指示し続けていた。
実は、攻撃時に中央に寄りたがる日本の悪癖には、ザッケローニ元監督も頭を悩ませていた。就任当初から、相手の守備網を広げるために、サイドの選手には「スタートポジションは外に張れ」と指示し続けてきたものの、2列目の選手たちは聞く耳を持たず。ショートパスによる中央突破に固執し、それがいつの間にか「自分たちのサッカー」にすり替わった。結果、ブラジルW杯のギリシャ戦でどうなったかは、今さら言うまでもないだろう。
ショートパスの連続による攻撃が、決して悪いわけじゃない。ただし、相手が陣形を下げて、中央を固めている状態で真正面から突破するのは、難易度が非常に高い。相手から見れば、パスの出し手も受け手も同一視野に入るからだ。