サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ハリルも悩む日本の“真ん中フェチ”。
逆襲のキーワードは「横に速く」!?
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/06/17 11:20
シンガポールはFW1人を残して9人が自陣深くまで引いてブロックを作り、日本にスペースを与えなかった。アジアの戦い、をまさに味わった夜だった。
ハリルホジッチ監督も気づいた“真ん中フェチ”。
ならば、相手の死角をつくり出す必要がある。大まかに方法論を説明するならば、まずはピッチの幅を活用し、相手を横に揺さぶる。守備ブロックを広げて隙間をつくったところで、パスの受け手が相手の背中側に入り込む。そこで、素早いパスワークをスタート。サイドに体を向けて対応する相手は、背中側の選手を見ることができず、いわゆる「ボールウォッチャー」になり、マークがズレていく。サイドからのクロスが効果的なのも、これと同じ原理だ。
就任から約3カ月、ハリルホジッチ監督もシンガポール戦の前半を見て、日本代表の選手が“真ん中フェチ”であることに気づいたようだ。試合後、こう明かした。
「相手が引いてくることは分かっていた。具体的な対策として言うと、逆サイドにダイアゴナル(斜め)のパスを要求していたが、選手はそれを実現できずに中に入りすぎていた。中を崩すのであれば、ワンタッチで2~3回(パスを)つながなければならない。ワンタッチの突破は4~5回成功したものの、シュートに正確さを欠いた。
ハーフタイムで選手に伝えたのは、中に攻めすぎているということだ。中から攻めるとフィニッシュが難しくなるし、ダイレクトには行けないだろうと。だから、できるだけ外からボールを入れてくれという話をした。特に斜めの、逆サイドへ出すボールを入れてほしかった」
太田や酒井のクロスからチャンスは生まれたが……。
ブラジルW杯とアジア杯での惨敗を経て、日本の選手たちは指揮官の「外から」という声に耳を傾けるようになった。後半に入り、吉田麻也や長谷部がサイドチェンジのパスを狙い、太田宏介や酒井宏樹が次々とクロスを入れた。55分には長谷部からの横パスを受けた太田がクロスを送り、相手DFの背後からニアに走り込んだ岡崎がヘディングシュート。70分にはファーサイドへの本田のクロスを、フリーで待ち受けた槙野智章が頭で叩く。岡崎のシュートはGKに、槙野の一撃はゴールポストに阻まれたが、中と外をうまく使い分けて攻めた時間帯だった。