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イチローの偉業を継承するために。
青木宣親もまた“特別な存在”だ。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2015/06/16 10:50
日本での通算打率は.329、メジャーでの通算打率は.287。しかし今季の青木宣親は、.330を越える打率を記録している。メジャーでの200本安打も視野に入ってきた。
打球の強さがこれまでの3年間とは全く違う。
ところが今年は前述の通り、タイトルを獲りそうな勢いで成績を急上昇させている。
「いいものをいつも追い求めているから、こういう結果が残っているんだと思う。でも打率とかそういう数字は終わってからのことだから、今は本当に気にしてない」
青木はそう語る。メジャー挑戦4年目の“進化”。今年は何が違うのだろうか。
「ようやくって感じはありますよ。3年かけて、やっとって感じ」
打撃フォームが変わった、という人がいる。どっしりとした下半身。頭上高く掲げたバット。確かに印象的ではあるのだが「日本にいた頃から打撃フォームは頻繁に変えていた」(青木)というから、打撃フォームの変更そのものはあまり目安にならない。今までと明らかに違ってるのは、その打撃フォームから飛び出す打球の強さではないかと思う。
たとえば6月10日の対メッツ戦の第1打席、青木はナショナル・リーグ屈指の本格派投手ハービーから右前打を放っているが、それは時速153キロの重い速球にまったく力負けせず、右方向に引っ張った結果だった。
「日本とメジャーの違いって結局、力の差」
真ん中高めの速球をライト方向に引っ張る――。日本で首位打者タイトルを3度も獲った青木だ。「そんなことぐらい出来て当たり前」と思うかも知れないが、それならメジャー最初の3年間に、もっと良い成績が残っている。
メジャー挑戦1年目、彼はこう言っている。
「日本のプロ野球とメジャーの違いって結局、力の差なんですよ。日本でだったら抜けてくれる打球が抜けない。日本でだったら内野の頭を超えていく当たりが超えない。野手の能力。投手のレベルの違い。人工芝と天然芝の違いもあるけど、基本的にはこっち(自分)の問題……力がないから、日本にいた時のような数字が残せないんだと思う」
たとえば野手の正面を突く、強い打球。メジャー最初の3年間で嫌と言うほど何度も経験したそれを、青木は単に「不運だったから」とは考えなかった。それが野手の間に飛ばないのはなぜか。一、二塁間に引っ張れないのはなぜか。抜けたと思った打球に野手が追いつかれるのはなぜか。