サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
“ヤットレスジャパン”の心臓最右翼!
柴崎岳、「速く」と「遅く」を操るために。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/06/12 11:05
名門・鹿島で弱冠23歳にしてキャプテンマークを巻き、海外移籍も間近と見られている柴崎岳。“ヤットレスジャパン”の心臓に最も近い男だ。
相手が引いた55分以降、チャンスシーンが激減。
むしろ気になったのは、55分以降だ。イラクはヤセル・サファ・カシムを投入し、システムを4-1-4-1に変更。重心を下げて、中央を閉める守り方にシフトした。これ以降、日本はボールを支配はするものの、チャンスシーンは減り、強引なミドルシュートばかりが増えた。前半、あれだけ輝いていた柴崎の存在感も、時間の経過とともに薄くなっていく。
84分に柴崎から永井謙佑へのロングパスのこぼれ球を原口元気が拾い、4点目を突き刺したものの、遅攻から複数の選手が連動して相手を崩すような場面はほとんどなかった。
吉田「岳にはヤットさんとは違った良さがある」
では、かつての「ヤット時代」と現在の「ヤットレス時代」とでは、遅攻の質にどんな違いがあるのか。ザックジャパン時代から、1列後ろで遠藤のプレーを見続けてきた吉田麻也は、新司令塔の柴崎への期待を込めてこう語った。
「岳にはヤットさんとは違った良さがある。でも、まだ運動量の面では足りないと思う。以前はまずヤットさんにボールを預けていたけど、今日はセンターバックからボランチにボールを預ける場面が少なかった。センターバックの立場からすると、ボランチが良いポジションで受けられなければ、なかなかパスは出せない。それができるようになったら、もっと岳らしいプレーが出ると思う」
より速い展開で相手最終ラインの背後へパスを通し、自らもゴール前に飛び込んで行く柴崎のプレーは、遠藤になかった長所だ。それをこなした上で、遅攻の場面でもいかに相手の嫌がるところでボールを引き出し、スイッチとなる縦パスを出せるか。そして、それを90分通して続けられるか。
選手たちの証言によると、イラク戦前までの段階で、相手が引いて守ってきた場合の戦略と具体的な攻撃手段について、まだハリルホジッチ監督は練習でもミーティングでも手をつけていない。6月16日に対戦するシンガポールは、イラクよりも力が劣る分、“ベタ引き戦法”を採る可能性が高い。そのときに、背番号7はどのようにして周囲を動かし、攻撃にスイッチを入れるのか。
進化した司令塔像を見せるなら、今でしょ。