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“ヤットレスジャパン”の心臓最右翼!
柴崎岳、「速く」と「遅く」を操るために。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/06/12 11:05
名門・鹿島で弱冠23歳にしてキャプテンマークを巻き、海外移籍も間近と見られている柴崎岳。“ヤットレスジャパン”の心臓に最も近い男だ。
遠藤保仁のいない“ヤットレスジャパン”。
岡田武史監督やザッケローニ監督の時代に、このスイッチ役を一手に引き受けてきたのが遠藤保仁だ。周囲は遠藤の技術と戦術眼を信頼してボールを預け、彼が顔を上げた瞬間に相手選手の間に走り出す。この遅攻を磨くことで、南アフリカW杯のときも、ブラジルW杯のときも、アジア予選を安定した戦いで突破してきた。
ブラジルW杯から1年が過ぎ、時代は変わった。現在の日本代表に、35歳となった遠藤はいない。3年後のロシアW杯を見据え、ハリルホジッチ監督は就任以来、一度も遠藤を代表に招集していない。では、“ヤットレスジャパン”において、誰が攻撃のスイッチ役となるのか。その第一候補が、遠藤の代名詞でもある背番号7を引き継いだ柴崎岳だ。6月11日のイラク戦で、ハリル体制となって初めてスタメン出場した。
アジアレベルなら、柴崎はすでにゲームを支配できる。
この試合で、はっきりしたことがある。アジアレベルの相手との対戦でプレッシャーのない状態ならば、柴崎は自在にパスを通し、決定機を演出することができる。
「1点目を含めて、目指す攻撃の形が出せたと思うので、これがどんなレベルでも出せるようになれば、攻撃のひとつの形になると思う」
試合後に柴崎本人が手応えを口にしたように、5分に早くも本田圭佑へのスルーパスで先制ゴールをアシスト。32分にも宇佐美貴史への縦パスが起点となり、岡崎慎司の3点目が生まれた。これ以外にも、彼の正確なパスが何度もチャンスを生み出した。
ただし、この日のイラクは決して“ベタ引き”していたわけじゃない。
「僕と岳のところには、あまりプレッシャーが来なかったので、楽にプレーできた部分はある」
柴崎とボランチでペアを組んだ長谷部誠が言うように、イラクは中途半端にラインを上げながらも、ボール保持者へのプレッシャーは“ゆるゆる”。先制点の場面では、柴崎がパスを出す瞬間に誰も体を寄せず、後方の最終ラインは全く揃っていない。柴崎ほどの技術があって、相手がこんな状態であれば、いとも簡単に最終ラインの背後は突ける。