プロ野球亭日乗BACK NUMBER
復帰は捕手か、それとも一塁手か。
阿部慎之助の選手生命を懸けた決断。
posted2015/06/12 10:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
2000年代後半から攻守で巨人を支えてきた阿部慎之助捕手が、プレーヤーとしての重大な岐路に立たされている。
6日に東京ドームで行なわれたソフトバンクとの交流戦でのことだった。9回の守りで、ファウルチップがマスク越しに阿部の顔面を直撃、苦悶の表情を浮かべて後ろにひっくり返った。実は交流戦開幕直後の西武戦でも、同じようにファウルチップがマスク越しに直撃し、その衝撃で古傷の頚椎ヘルニアが再発して、状態によって先発を外れるケースが多くなっていた。この日は試合途中の7回に代打で起用され、そのまま守りについたところ、9回にファウルが直撃してしまった。
苦悶の表情で倒れた阿部はこの試合こそ最後まで出場したが、翌7日には首の状態が悪化して登録抹消が決まった。
「あまりいい状態ではないので、こういう結果になってしまい、チームに迷惑をかけてしまった。きのうのファウルチップのダメージが大きかった」
抹消が決まった阿部は無念の表情でこう語って東京ドームを後にしたが、今後は治療を続けながら、改めてファームで状態を整えて再登録を待つことになる。ただ、次に一軍に登録されるときにこのまま捕手として戻るのか、それとも一塁に再挑戦するのか、どういう形で一軍復帰を果たすかの決断を迫られる。それはまさに選手生命をかけた決断となる。
再生のためのコンバートが逆効果に。
昨年も首の故障で満足なシーズンを送れなかった阿部を再生するために、オフに原辰徳監督が打ち出したのが、一塁へのコンバートだった。
「99%、捕手に戻すことはない」
不退転の決意で行なったコンバートだったが、開幕してみると微妙な歯車の狂いが浮き彫りになる。
捕手が本業だった昨年までは、一塁守備にもある程度気楽に取り組めていたが、一塁が本業となると逆に慣れないポジションへの重圧が襲った。
平凡なゴロをファンブルしたりワンバウンドの送球を後ろに逸らすなど、細かなミスが頻発。阿部に負担をかけまいとプレッシャーを感じるせいか、スローイングには定評のあった村田修一三塁手の送球までもがバラバラになる悪循環も生まれた。
加えて阿部本人も、一塁守備に神経を使うために肝心のバッティングにも精彩を欠いていった。阿部を生かすために行なったコンバートが逆に負のスパイラルを生み、試合を重ねるごとにそのマイナスの螺旋はどんどん深みにはまっていったのである。