プロ野球亭日乗BACK NUMBER
復帰は捕手か、それとも一塁手か。
阿部慎之助の選手生命を懸けた決断。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2015/06/12 10:50
ファースト転向から捕手復帰、そして故障と苦難がつづく阿部。当面は二軍で首痛の回復に務めることになるが、36歳となった巨人の“顔”はどのような形での一軍復帰を選ぶだろうか。
捕手再コンバートは、阿部を生き返らせるため。
そんなときに起こったのが、相川亮二捕手のケガだった。阿部の一塁転向を受けて、2年目の小林誠司捕手とともにマスクを被っていた主戦捕手の戦線離脱。
チームの危機に、阿部が捕手復帰を志願した。
「99%ないと言ったことを決断したわけだから、私もそれなりの覚悟の上だった」
原監督は振り返る。
これは阿部にとっても指揮官にとっても、単なる捕手の補充策ではなかった。阿部慎之助というチームの柱を生き返らせるためにどうしたらいいのか。そのために覚悟を決めて決断した捕手復帰だったのである。
復帰後は打席でもコンスタントに安打が出始め、再びマスクを被ることで、思惑通りに阿部は輝きを取り戻したように見えた。4月17日の阪神戦で左太もも裏の肉離れを起こして登録抹消となったが、5月13日の広島戦で復帰。その後は同じくケガから戻った相川との併用で、休養をとりながらの出場がようやく軌道に乗りかけていた。そんな矢先のアクシデントだった。
シーズン再開からの復帰は捕手か、一塁手か。
原監督は交流戦明けの練習期間の様子をみて、シーズン再開から復帰の可能性を阿部本人に伝えていると語っている。
ただしその復帰が果たして捕手としてなのか、それとも一塁の可能性も含めて戻ってくるのか。そこが阿部の今後の野球人生を考える上でも、大きな岐路となるだろう。
これまでの経緯を振り返れば、もちろん捕手として復帰できるのがベストなのは言うまでもない。
ケガのリスクを避けて一塁で戻っても、前回の轍を踏まない保証はどこにもない。慣れないポジションで、守備の負担からまた負のスパイラルにはまって、プレーヤーとしての輝きすらも失ってしまう危険性も考えなくてはならないだろう。
ただもし捕手で復帰となれば、今回と同じようなアクシデントがいつ起こってもおかしくない。再びファウルチップが顔面を直撃して、ヘルニアを抱える首に致命的な衝撃が走るかもしれない。捕手で戻るということは、選手生命をも危機にさらすリスクを冒すことになるのだ。