プレミアリーグの時間BACK NUMBER
天敵・ブラッター辞任でお祭り騒ぎ。
イングランドよ、“正気”を取り戻せ。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2015/06/16 10:40
「抜本的な改革が必要だ」との声明を残し、辞任を発表したブラッター。後任にはジーコ元日本代表監督はじめ、複数の名前が挙がっている。
ブラッター「嫌がらせは忘れない」
「嫌がらせを受けた事実は忘れない」と語ったのは、急転直下で辞任の決意を固める前のブラッターだ。続投決定で鼻息の荒かったFIFA会長は、祖国スイスのメディアを通じて汚職を巡る今回の逮捕劇と5年前のW杯開催国決定投票における敗北劇の関連性を示唆し、その時の敗者に当たる米国とイングランドに対して毒づいた。
その会長は辞職決意を余儀なくされ、かつ、来年前半の後任選挙までという「延命」がFA会長の読み通り短期に終わることになったとしても、FIFA内部のブラッター派まで一掃されるわけではない。その数は相当数にのぼる。なにせ、世間がFBIの言う「不正行為のW杯」で大騒ぎになっていた最中でさえ、ブラッターの会長再選が実現したほどなのだ。
ロシアからは「FBIの陰謀だ」として、逆に反ブラッター派の行動が非難されているという知らせも届いている。それに加えて、イングランドのFA会長が「再投票なら'22年大会は米国開催になるかもしれない」と発言し、国内の政治家が「ロシアのかわりに'18年大会を引き受けることも可能だ」と自国開催をアピールするようでは、ブラッター派の加盟国から「5年前の投票で敗れた復讐に出た」と穿った見方をされても仕方ない。
アジア・アフリカを「反欧州」にしてはいけない。
そのブラッター派はアジア地域とアフリカ地域の加盟協会が主流といわれているが、いわゆるサッカー界の「第3国」勢の間で「反欧州感情」を煽るような事態は絶対に避けなければならない。
イングランドでは、ブラッターは第3国勢を味方につけることに余念がなかったと言われている。その手段としての賄賂疑惑は問題でも、サッカー界における小国や後進国がFIFA加盟国としての尊厳を持てるようになったこと自体は決して悪いことではない。会長選挙における「一国一票」制にしても、加盟国間の「平等」という観点からすれば正当だ。
ブラッター体制下でFIFAの世界における「市民権」を得たアジアやアフリカの加盟国が、「欧州天下」の復活と共に再び「余所者」扱いを受ける未来を警戒するようになっても不思議はない。