ブラッターを「エイリアン」に喩えた人も。

　奇しくもブラッターを映画『エイリアン』の「異星生物」に喩えたのは、イングランドのデイビッド・バーンスタイン前FA会長。「エイリアンを宇宙船から追い出すことはできない。やっとのことで成し遂げたと思っても、実際には外で必死に宇宙船にしがみついていた」と、権力にしがみつくFIFA会長を評している。

　事実、ブラッターは辞意を表明してもすぐに会長職を退くわけではないし、後任としてアフリカのサッカー連盟会長を務めるイサ・ハヤトウが選ばれる可能性もある。ハヤトウは5年前に例のBBCテレビ番組で不正疑惑をかけられている、言わばブラッターの生まれ変わりのような後任候補だ。私利私欲に駆られているとして、彼らのようなFIFA権力者に対抗する立場を取るイングランドなのだから、自分たちが「利己的」と受け止められるような言動だけは慎まなければならない。

　国内では、今回の会長辞任がブラッターにとっての「悪夢の始まり」と言われているが、母国のFAやメディアが果敢に先陣を切るようにして挑んできたFIFA浄化を目指す「聖戦」もまだ本格的に始まったばかり。イングランドは、ブラッター辞任という第1弾勝利に浮かれることなく慎重に戦いを続けるべきだ。「サッカーの母国」としてのプライドをこれ見よがしに誇示することなく、あくまでも体質改善に心を一つにするFIFAの一員として。