松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
残り2ホール4打差でも勝利を信じる。
松山英樹の「小さな可能性」思考法。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2015/06/08 16:30
不調を嘆きながらもディフェンディングチャンピオンとして堂々と戦い、5位という成績を収めた松山英樹。これでトップ10以内は今季7度目と、安定感は抜群だ。
思えば、去年もパター忘れやドライバー破損が。
考えてみれば、去年、優勝を飾ったときでさえ、予期せぬ出来事は、実はいろいろあった。メモリアル前週のクラウンプラザ招待では、首位で最終日を迎えながら10位に終わり、その翌週、ミュアフィールドビレッジにやってきた松山はあからさまにイライラしていた。
とりわけ、パターには苦しめられていた。開幕前夜もベッドに入るぎりぎりまでパターを握っていたのだろう、初日の朝ウォーミングアップの練習をしようとしたとき、バッグの中にパターが無いことに初めて気が付いたという。チーム松山の関係者が大慌てでホテルへ戻り、スタートホールのティグラウンドで手渡すドタバタ劇。それでも松山は、初日を21位で発進し、2日目は4位、3日目は3位と順位を上げていった。
ドタバタ劇は最終日にも起こった。72ホール目にティグランドで集音マイクに当たったドライバーが壊れ、プレーオフは3番ウッドで戦った。右のフェアウェイバンカーから打った第2打は、グリーン左のロープ際に座っていた白人女性に当たり、ラフに沈んだ。が、それでも彼はそこから冷静に寄せてパーパットを沈め、勝利のガッツポーズを決めた。
納得できないプレーもあった。予期せぬ出来事も次々に起こった。だがそれでも冷静に対処し、「結果はすばらしいものになった」。その事実、その経験を経てからのこの1年で、松山の心はさらに強くなった。
最終日に5打差でも「チャンスはある」。
ゴルフという戦いの世界では、いつ何が起こるかわからない。でも、だからこそ、どんなに小さな可能性でも信じよう、信じたいと思える。彼はそんなふうに前向きで、決して諦めない強さを身に付けてきた。
今年の大会の最終日を首位に5打差の5位で迎えようとしていたときも、彼は自身の可能性を信じていた。
「5打差は逆転するには大変な数字。大きいけど、ベストなプレーができればチャンスはある。自分が2アンダーでも相手が3オーバーなら、(そんなふうに)みんなが打てば、それだけでチャンスはある」