自分の4連続バーディーに気づかない程の集中。

　そんなふうに健気にポジティブ姿勢を目指したことが、好結果を導き出したのだろう。いざ蓋を開けてみれば、初日は8アンダー、64をマークして首位発進。後半は11番から14番まで4連続バーディーの見せ場も作ったが、それを指摘されると「えっ？　4連続？」。4連続バーディーを奪ったことに気づかないぐらい、彼は目の前の一打一打に集中し、そして好プレーを披露した。

　2日目は朝のウォーミングアップの段階からショットが不調になり、「それがそのまま続いた」内容となってフェアウエイやグリーンを幾度も外した。だが、小技を駆使してパーを拾いまくり、5位に踏みとどまった。

自分のショットで観客が流血のアクシデントも……。

　3日目は、ショットの調子は「昨日より良くなった」ものの、前半はパットが決まらずバーディーチャンスを4度も逃し、折り返し後の11番（パー5）ではフェアウェイからの第2打が観客の頭に当たって流血させてしまうアクシデントに見舞われた。

　芝の上に横たわる白髪の米国人男性。その痛々しい姿を心配そうに眺める松山の顔面は蒼白だった。幸いにも大事には至らなそうだとわかると、松山は負傷した男性に丁寧に何度も謝罪した上でプレーを続行。アクシデント直後の第3打を見事に寄せてバーディーを奪い、13番、15番もバーディーとして盛り返していった。

「良かったと言っていいのかどうかわからないけど、あの（事故の）あと、しっかり伸ばして終われたので良かった」

　そうすることが負傷した男性への何よりのお詫びになるのだと自身に言い聞かせていたかのようなプレーぶりだった。予期せぬ出来事で受けた動揺さえ、集中力を高めるためのスイッチに代え、流れを好転させる。

　たとえ何が起ころうとも――そんな成長と執念が、松山の体全体、ゴルフ全体から漂っていた。

【次ページ】　思えば、去年もパター忘れやドライバー破損が。