ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
バルサが守り、ユーベが攻める展開?
CL決勝を戦術的視点で考えると……。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byAFLO
posted2015/06/04 10:40
CL準決勝でレアル・マドリーを下し、気合を爆発させるブッフォンとモラタ。厳しいマークが予想されるエース・テベスを助ける存在となれるか。
バルサのカウンターと、ユーベのポゼッションという構図。
ただし、バルサにとってユーベのポゼッションは狙い目になる。浅いラインの裏を突かれてカウンターアタックから失点するのはバルサの負けパターンだが、相手に少々押し込まれる展開はむしろ、好都合だろう。今季のバルサはカウンターアタックにも強みがあるからだ。
スペースさえあれば、前線のトライアングルだけで十分にゴールを計算できる。バイエルンを仕留めた準決勝は好例だろう。バルサの負けパターンが、気づけばそっくりユベントスの落とし穴へ「反転」する可能性があるわけだ。
バルサのカウンターか、ユーベのポゼッションか――。
勝負の分かれ目は案外、こちらのストーリーかもしれない。1つの色に染まらないファイナリストが顔をそろえたことによる面白味だろう。トランジション(攻守の転換)で先手を取った方が有利になるが、それに加えてバルサは中盤から前のプレッシング、ユーベは中盤から後ろのマーキングが、互いの思惑を打ち消すポイントになりそうだ。別の言い方をすれば、準決勝の敗者であるバイエルンがバルサに対して、レアルがユベントスに対して抱え込んだ課題だろう。それを克服できるかどうか。
バルサの狙い目はピルロ。
バルサが押し、ユーベが引く。この前提を踏まえてユーベのポゼッションを防ぐなら、前線からのプレッシングが効果的だろう。狙い目はピルロだ。
ユーベがボールの回収地点を下げられた場合、反撃するにはピルロの技術が必要になる。ここに圧力をかけてボールを奪えれば、ゴールは目の前だ。もっとも、この分野でバルサの3トップはアテにならない。ポイントはイニエスタとラキティッチの2列目だろう。奪って、縦一発――というシナリオの成否は2人の働き次第か。
ユーベがバルサのカウンターを防ぐには、出し手に対するプレスに加え、後方からのラストパスを引き出す3トップのマーキングが命綱だ。バイエルンのようにマークをつかみ損ねれば、失点は避け難い。ユーベは準決勝ではレアルの攻撃陣を封じ込めたが、バルサの3トップを相手に無事で済むかどうか。早い時間にカードをもらえば、リスクは一気に跳ね上がるだろう。昨年のブラジルW杯で「噛み付き事件」の当事者となったスアレスとキエッリーニの攻防は台本をひっくり返しかねないが……。