錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
海外メディアが錦織圭を優勝予想!?
今年の全仏OP、過去と何が違うのか。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/05/21 11:00
昨年の全米OPの準決勝でジョコビッチに劇的勝利を果たした錦織だが、5月15日にはローマで敗れている。対戦実績は2勝3敗……全仏で再度の撃破なるか!
錦織を全仏優勝候補に挙げる海外メディアが。
ローマで優勝したジョコビッチがマドリードを欠場していたこと、逆にマドリードで頂点に立ったアンディ・マレーがローマの3回戦を前に棄権していることもまた、スケジュールがいかに苛酷かを裏付けるものだ。
しかし一方で、2011年にはジョコビッチが、2013年にはナダルがこの2大会を連続して制した事実もあり、それは彼らのフィジカルとメンタルのレベルの高さを思い知る手がかりにもなる。
錦織に勝ったジョコビッチは最終的にローマを制し、今季出場したグランドスラムとマスターズシリーズをここまで全て制覇。調子の上がってこないナダルを尻目に、全仏オープンでも当然ながら優勝候補の筆頭である。
そんなジョコビッチの対抗として、あるいは少なくともダークホースとして錦織の名前を挙げるメディアが、贔屓目なしの海外でさえちらほら存在する。マスターズシリーズでのタイトルがまだない選手にこれだけの高い評価が与えられるのは、異例と言ってもいいのではないか。
ナダルとはまったく異なるクレーでの戦術。
確かに、バルセロナ2連覇、昨年準優勝したマドリードでベスト4、ローマはベスト8に終わるも敗れた相手はジョコビッチ……こうした戦績だけでも十分な説得力はある。だが、錦織への評価はプレーの質に起因すると思われる。
錦織のテニスが“キング・オブ・クレー”と呼ばれてきたナダルのテニスとはまったく質の違うものであることは、一目瞭然だ。
ナダルがベースラインの後方から、壁のように堅固なディフェンス力と圧倒的なパワーを武器に強烈なトップスピンを繰り出すのに対し、錦織はベースラインに近づき、スピードを生かして早いタイミングでボールをとらえ、相手の時間を奪いつつ揺さぶっていく。
ジョコビッチでさえ、追い詰められると後方に下がって行くが、錦織は下がらない。むしろ劣勢のときほど前に一歩入って苦境を打破しようとしている。また、錦織の得意とする打球方向の切り返しは、ライジング打法によってより大きな効力を発揮する。