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韓国メディアも呆れる柏の勝負強さ。
水原の肉弾戦を封じた“二段構え”。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/20 11:30
2ゴール1アシストを決めてアウェーの地で躍動したレアンドロ。試合を通して終始、旺盛な運動量でチームを牽引した。
水原の猛攻をしのぎ切った、柏の経験。
ゲームのもうひとつのポイントは60分以降にあった。
鄭は「体力を消耗した」といいながらも、水原は猛攻を仕掛けていた。徹底的にサイドに展開し、そこから柏DFライン目掛けてロングボールを幾度となく入れてきた。柏はまるでどしゃ降りのクロスの雨を浴びるといった状況に。さらに水原は73分に長身FWカイオを投入し、2トップにして守備ラインに揺さぶりをかけてきた。
しかし柏はこれをじっと耐え抜いた。これも柏のこの大会での経験が生きたものだった。グループリーグ初戦の全北戦で「守り抜く」という展開を経験済みだったのだ。栗澤は、クロス攻撃の日韓の違いをこう説明する。
「日本だとクロスを上げる場合、確実にターゲットを目掛けて上げることが多い。『背の高い選手』だとか、『ファーサイドを狙ってくる』とか。だから対応がしやすい面がある。確固たるターゲットがないとむやみに上げてこないことも多いですし。いっぽうで韓国チームのクロス攻撃の何が難しいかというと……『とにかくボールを蹴ってくる』という傾向がある点なんです。ターゲットがどうだ、という意識よりも『ゴール前で何かハプニングを起こそう』という意識を感じることが多い。中にいる選手も『自分が捨て身になっても構わない』という感じで。これが逆に対応しにくいんです。つまり的が絞りにくい。とはいえ、ウチのチームはこれに対する経験から、対応ができています」
「なぜKリーグに対して強いのか?」という質問が。
試合後の監督会見では、柏の吉田監督に対して、韓国メディアから「ドストライク」の質問が飛んだ。
なぜ、柏はKリーグ勢に対して強いのか。
吉田は答えをはぐらかした。「逆にKリーグ勢の強さを感じている。勝てたのはゴールを決めた時間帯がよかった、といった偶然が重なったこともある」と。さらに会見では「まだホームゲームが残っていて、チーム内の誰も“勝った”とは思っていない」という内容を繰り返した。
しかし、場面場面を切り取ると、そこまでのこの大会での柏の強さが垣間見えるゲームとなった。
速いパスワークでかわす。そしてぶつかるべき状況では徹底的にぶつかる。
この日も水原の猛攻を受けていた73分過ぎに、相手の鄭大世とシン・セゲの2人が同時にピッチに倒れるシーンがあった。柏の選手の強いチャージを受けた結果だった。まるで「テクニックの日本、力強い韓国」といったステレオタイプなイメージを変えるような風景だった。