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錦織圭がクレーに持ち込んだ“革新”。
バルセロナを連覇したもう一つの意義。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2015/04/28 16:00
ツアー通算9勝目を挙げて、日本人単独最多となった錦織は全仏オープンに対して「どれだけできるかワクワクしている」とコメントしている。
難しい決勝戦、試合を決めた要因は何か?
試合を決めた要因は、錦織の勝負強さ、その一点に尽きる。
第1セットは5-4から相手のサービスゲームをブレーク。セット終盤に訪れた唯一のチャンスをものにした。第2セットは先行を許す厳しい展開だったが、3-4からの相手サービスゲームを破り、4-4のタイに追いついた。
次のアンドゥハールのサービスゲームでは、30-30で相手がダブルフォールト。彼にとってこの試合で唯一のダブルフォールトが、一番やってはいけない場面で出た。ついさっきまで、やることなすことうまくいく“ゾーン”の状態だったアンドゥハールだが、ここでは錦織の強打のリターンの幻影に怯えたのだろうか。
最初のマッチポイント、錦織は相手のセカンドサーブをねらいすまし、火の出るようなバックハンドのリターンをダウンザラインに突き刺した。
第1シードとして臨んだ大会では、21勝1敗。
この試合の錦織は、6本あったブレークポイントを4度のブレーク成功に結びつけた。この集中力を梃子に、押され気味の展開を終盤にひっくり返したのだ。
「攻撃的にプレーしようとつとめたことが、大事なポイントをものにできた要因だと思う。ただ、彼のプレーのほうがまさっていたと言うべきかもしれない」
錦織は1時間35分の苦闘を謙虚に、また、実感を込めて振り返った。
第1シードとして臨んだ試合は、これで21勝1敗となった。格下の相手に苦しんだが、それでも負けない、それが今の錦織の強さなのだ。
「オラ(どうも)!」。優勝スピーチはスペイン語の挨拶から始まった。英語に切り替え、「バルセロナは大好き。連覇できたからそう言うのではなく、大会の雰囲気も、みなさんの人柄も好きなんです。地元でプレーしているような気分でした」と続けた。
世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチは出場せず、大会第2シードのラファエル・ナダルは早いラウンドで敗退したため、この大会でBIG4との対戦はなかった。ランキングだけを見れば、順当勝ち。とはいえ、クレーコートのバルセロナを錦織が連覇した価値は計り知れない。