錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の全仏制覇が見えてきた!?
ナダルが自信喪失の今、大事なこと。
posted2015/04/30 11:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
錦織圭は自身にとっての今季クレー第1戦、バルセロナ・オープンで圧巻の連覇を果たした。セットを奪われた試合も、錦織らしくないミスで自分の首を締めた試合もあったが、敏捷さ、多彩さ、正確さなどが群を抜き、すなわちラリーの支配力で相手を圧倒しているから、スコア的に劣勢の場面でも、見ていて負ける気がしない。
第1シードとして臨んだ[500]の大会だったが、ならば優勝は当然とか順当という見方はやや短絡的だ。トップシードが優勝するということは実はそう高い確率ではないのである。
今季、バルセロナ・オープンまでATPの世界ツアーでは、[250]と[500]のグレードが19大会あった中で(さらに上位のグレードには[1000]やグランドスラム等がある)、第1シードが予想通りに優勝したのは5大会のみ。うち2大会が、錦織の制した2月のメンフィスと先週のバルセロナなのである。先週はブカレストでも[250]の大会が開催されていたが、第1シードの優勝どころか上位4シードの誰も決勝に進んでいない。
それくらい、ツアーで番狂わせは日常茶飯事なのだ。
錦織が「500の中でもタフな大会の一つ」と言ったバルセロナも、第2シードはその週のランキングで錦織より上だったラファエル・ナダルで、第3シードにはダビド・フェレールという強力なクレー巧者も潜んでいた。結局彼らと対戦することなくつかんだ栄冠だったが、それは幸運だったというより、彼らも勝ち進めないほど拮抗した戦いを錦織が制したという点を強調したい。
4大会のうち3大会を連覇しているという快挙。
第1シードとしての勝率に加え、錦織はこれまでディフェンディング・チャンピオンとして臨んだ4大会のうち今回を含めて3大会で連覇に成功していることも、特筆すべきかもしれない。
まるで、自分の今の地位や過去の成功からプレッシャーという成分だけ振り落とし、自信や収穫は丸ごとキープして新たな成功につなげているようである。
先週も、「自信」を表す「confident」という言葉をポジティブな文脈の中で繰り返し使っていた。