サムライブルーの原材料BACK NUMBER
ロンドン世代の反攻が始まった日。
清武弘嗣が吐露した世代交代の意志。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/03/31 10:30
ロンドン五輪世代の「キング」として君臨していた清武弘嗣も、A代表ではいまだ確固たる地位を築けていない。25歳、選手としての全盛期はこれからだ。
己の結果とともに、若いアタッカーのゴールを求めて。
五輪のメンバーが多く起用されたことに触れると、彼の口調は少し強くなった。
「これからはどんどん、そういう若い世代の人たちがやっていかないといけない……という気持ちがあったんでね。なおさら得点が前半に入らなかったのが凄く悔しかった」
「悔しかった」が、「凄く悔しかった」に言葉が変わっていた。
己の結果そのものより、武藤や川又を含め若いアタッカーたちのゴールを導けなかったこと、この若いスタメンで結果を出せなかったことの悔しさが、彼のなかで渦巻いているようだった。
永井、山口、権田らと共有する「悔しさ」。
清武自身も、2013年11月のベルギー戦以来となる先発出場だった。ブラジルW杯ではコロンビア戦に途中出場したのみで、わずか5分間の出場に終わった。アギーレジャパンの立ち上げ当初にも、招集されてはいなかった。しかし彼は、ハノーファーで定位置をもぎ取り、バイエルン・ミュンヘン相手にもゴールを奪っている。ロシアW杯で自分たちが中心になるという決意を彼なりに表現しながら、今、ここにいる。
31日のウズベキスタン戦は、メンバーが入れ替わる可能性が大きい。
だが、はっきりと「悔しい」と言い切った清武の次を、見てみたいと思った。きっとその悔しさは、永井、山口、権田たちも共有しているに違いないとも思えた。
静かな口調の裏に、静かな闘志が見え隠れする。
「トップ下はやっぱり楽しかったですよ。いろいろな発見もありましたから。まぁまだ始まったばかりなので」
ロシアW杯への強い思い。
悔しさを得たチュニジア戦も「彼ら」にとって特別な一日になった。