サムライブルーの原材料BACK NUMBER
ロンドン世代の反攻が始まった日。
清武弘嗣が吐露した世代交代の意志。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/03/31 10:30
ロンドン五輪世代の「キング」として君臨していた清武弘嗣も、A代表ではいまだ確固たる地位を築けていない。25歳、選手としての全盛期はこれからだ。
清武と永井のホットラインは今も健在。
前線からの連動したプレスで、サイドハーフの永井、武藤嘉紀が体を激しく寄せていき、その次のプレスで回収していく。取ったら縦に当てて、速攻で仕留めるというハリルホジッチの指令を忠実にやろうとしていた。意識を強めすぎたのか途中からはプレスの強度が多少弱まったものの、ひるんだチュニジアを威嚇するには十分だった。
清武と永井は、息の合った連係を披露している。
前半12分には長谷部誠の縦パスに右サイドから、中に入ってきた永井がワンタッチで右に送り、清武が中に走り込む川又堅碁にクロスを送ったシーンがあった。27分には清武の縦パスを永井がスルーして、武藤にボールが渡って永井のクロスにつなげている。手数をかけず、スピードに乗った攻撃を披露した。
元々、清武-永井はロンドン五輪でも知られたホットライン。グループリーグのモロッコ戦では清武の浮き球のパスに裏に抜け出した永井がゴールを奪い、エジプト戦でも清武のクロスに永井が合わせている。A代表に場を移しても、ホットラインとして機能する予感は漂っていた。
「自分たちは結果を出せなくて、いつものメンバーが」
この日、パスの出し手になることが多かった永井は「少々(パスが)ずれてもキヨはうまいし、収めてくれるから」と変わらぬ信頼感を口にしている。逆に清武のほうは「謙ちゃん(のスピード)をもっと活かしてあげたかったんですけど、チュニジアも引いてきてあまりスペースがなくて……。ボランチやトップ下からスルーパス1本でというのが、理想だとは思う」と永井の持ち味を引き出せなかったことに唇を噛んだ。
ロンドン五輪世代が多く名を連ねた、せっかくのチャンス。
奮闘はしてもゴールに結びつかなかったことに対してどう思ったのか。
清武は言った。
「何本かいい形はありましたけど、それで点が取れなかったのだから攻撃陣としては評価できないですね。自分たちは結果を出せなくて、後半に入っていつものメンバーが結果を出して……。正直、悔しかったですね」