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「俺はしゃべって指示するタイプ」
清武弘嗣がドイツで取り戻した“我”。
posted2015/03/16 11:45
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
3月7日、ブンデスリーガ第24節のバイエルン戦で先制ゴールを決めた清武弘嗣。相手DFのまたを抜く技ありのゴールに、ハノーファーのサポーターは狂喜した。しかし、その3分後に失点。終わってみれば1-3と王者にねじ伏せられた。
「ゴールを喜んでいる場合じゃないですよ。今年に入って1勝もできていないから」
敗戦にもかかわらず、試合後の清武の声は弾んでいた。危機感を抱きながらもその難題を前に、どうにかしてやろうという意欲が感じられる。
「バイエルンはやっぱり強かった。強すぎましたね。年に2試合しかバイエルンとできない。代表クラスの選手とやるのは、すごく刺激的で貴重な経験。楽しかったですね。勝てなかったのは残念ですけど……」
善戦しても勝てない。それでも、泥沼のような残留争いから抜けられず悲壮感に包まれていた昨季ニュルンベルクのときとは、清武は明らかに違う表情を見せている。
何が変わったのか? それを聞きたくて、3月13日ハノーファーの練習場へでかけた。
春めいた陽ざしのなか、選手たちの声が響く。コンディション調整のような軽いメニューを40分ほど消化して、その日のトレーニングは終わった。
「昨日、一昨日と紅白戦も含めてかなりハードな練習だったから、今日はこんな感じなんですよ」
練習グラウンドからスタジアム内にあるロッカーへと、選手たちは木立ちのなかを歩く。スタジアム入口に立ち止まると、清武は現在の心境を話し始めた。
1年目に見せた強気は、無理をしたものだった。
――ドイツへ来て3シーズン目。どのような変化がありましたか?
「ドイツの環境にも慣れて、サッカーにも慣れて、もっと結果が欲しいというのが素直な気持ち。ハノーファーという新しい環境で、改めて外国人として、助っ人として求められているというのをすごく感じる。3年目で遅いのかもしれないけど」
――移籍1年目は、すごく強気を押し出しながら戦っているように見えた。逆に肩に力が入っているようでもあったけれど。
「自分のことで精一杯、結果を出さなくちゃいけないという気持ちが強くて、パスじゃなくて、シュートを打たなくちゃという、そういう意識がありました。今思えば、それが気負いになっていたかも。今も当然ゴールは欲しいし、シュートもたくさん打ちたいと思うけど、自分がゴール前へ入っていくことをまずは考えている。ニュルンベルク時代は遠目からでもシュートを打つ場面が多かったんですけど」
――パスを選択しながらも、味方を使い、効率良くゴールを狙う。
「そうですね、そういう意識がありますね」