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「俺はしゃべって指示するタイプ」
清武弘嗣がドイツで取り戻した“我”。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2015/03/16 11:45
ハノーファーに移籍した今季、清武弘嗣の表情は昨年までと一変している。プレー面でもチーム2位タイとなる4得点をあげ、攻撃を牽引している。
「やっとチームも自分も考えられるようになった」
――代表というモチベーションがなくても頑張れると。
「そうそうそう。やれるじゃんって。でも、考えてみたら、セレッソや大分にいたときも、代表のことを考えるより、チームのことを考えて、毎日集中して過ごしてきた。それで結果がついてきて、代表へ行ける。常にモチベーション高くクラブでやるべきことをやる。それが一番だと。そういう感覚をドイツへ来て、今初めて味わっているんです。
試合のあと、今までには無い疲れを感じられるようになった。すべてを出し切ったなぁって。だから『これが俺の求めていたサッカーなんかなぁ』と思っています。この前のバイエルン戦も守備から入ったから、守備に追われる時間が長かったけど、それでも自分の力を出し切った感があるんですよね。もちろんあの結果は悔しいし、もっとやれただろうという気持ちもあるけれど、やりきったという感覚があるんです」
――満足感や達成感とは違う充実感ですね。
「そういう気持ちの疲れも、身体の疲れも、嬉しい疲れです。モヤモヤしている疲れよりは全然良い疲れだから。それを今感じられています。3年目になってやっとチームのことも、自分のことも考えられるようになった。1年目、2年目は自分のことで結構精一杯という感じだったから」
「しゃべるのはすごく重要だと改めて気づいた」
話をしている最中にも、清武の元へ子どもたちが駆け寄り、サインをせがむ。ロッカーへ戻る選手たちは「コンニチハ!」と日本語であいさつしてくれたり、清武を冷やかす仕草をしたりと、絡んでくる。
――選手がみんな明るいですね。若い選手も多い?
「そうですね。俺が中堅くらいなので、若い選手も多いですよ。(酒井)宏樹が前からいてくれたこともあって、周りの選手たちが良い雰囲気を作ってくれるので、チームにはすんなりと溶け込めました」
――試合中も結構声を出しているように感じました。
「やっぱりしゃべらないとダメですね。しゃべるのはすごく重要だというのをハノーファーへ来て改めて気づいた。遅いですけど(笑)。しゃべって伝えて、指示をしながらプレーするのはやっぱり大事なこと。俺はセレッソや大分のときはそういうタイプの選手だったのに、ドイツへ来て、言葉がわからないから躊躇していたし、自分の気持ちを抑えていた。言いたくても我慢するし、実際に言えなかった。でもハノーファーへ来てからは、言いたいことはバンバン言っているつもりです」