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<再び世界の頂点を目指して> “未来のサッカー日本代表”を強くするために、今やるべきことを考える。
posted2015/03/19 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
今こそ、みんなで“未来”について真剣に考え、具体的な行動を起こす
時なのではないか。山本昌邦、森島寛晃、土田晃之、福西崇史の4氏に、
“日本サッカー育成論”について熱く語ってもらった。
山本昌邦
「世界で勝つためには“トップトップ”の指導者育成が不可欠」
日本は昨年、U-17W杯とU-20W杯の出場権を勝ち取れなかった。貴重な経験の場を失ったことは大きな損失だ。
たとえばスペイン代表は1999年のワールドユース(現・U-20W杯)で初めて優勝し、その11年後の南アフリカW杯で世界一の座に就いた。シャビやカシージャスたちがユース時代から勝者のメンタリティーを積み上げ、「俺たちは世界で勝てる」と自信を膨らませながらやってきた先にW杯初優勝があったわけだ。
そのスペインがオランダを下したあの決勝は、116分にイニエスタが均衡を破るゴールで優勝を決めたものだ。決勝を含めた7試合、クタクタになるまで走ったうえに、絶対に勝ちたいという強い気持ちがゴールを生み出した。
育成年代の選手たちを見ていくにあたって、一番大切なものとは。私なら89分、もっと言えば119分で何を出せるかどうかという部分を見る。技術やベース部分は誰が見ても大体分かる。でも見えない心の部分を、何よりも見たい。素晴らしいサッカーをして内容が良かったとしても、勝たなければ意味がない。私がジュニアユース代表から日本代表まで指導した中田英寿を引き合いに出せば、彼よりうまい選手はいた。それでも中田が“一番出世”になっていったのは、何事にもあきらめないメンタリティーと、結果から得られる自信が相乗効果となっていったからだ。そういう選手の集合体が日本代表であるはずだ。
代表チームを登山にたとえると分かりやすい。思わぬハプニングはつきもので、強風が吹きつけたりして足を動かせなくなるかもしれない。ただ、いかなる状況でも柔軟に対応して山頂にたどり着けるのが少数精鋭のチームというもの。登りきるには気力やメンタルというものが特に重要になってくる。
サッカーも同じで、ピッチが悪い、猛暑など過酷な条件をはねのけていかなければならない。そしてまた、山頂にたどり着いた成功体験があるゆえ、もっと高い山を目指すことも可能となる。
こういった胃の痛くなるようなプレッシャーを乗り越えた者しか、強くなっていかないというのが私の持論である。
言うまでもなく、育成年代の子供たちの力を引き出していくのは、指導者の役割である。彼ら自身の質を上げていかなければ「いい育成」など成り立たない。