フットボール“新語録”BACK NUMBER
Jとブンデスで監督人事の新潮流。
“自前の監督”は、早くて安い!?
posted2015/03/02 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
「このトレンドには4つの理由がある。相互理解、監督育成システムへの信頼、年俸の安さ、そしてチーム作りに時間がかからないことだ」
フランク・ヴォルムート(ドイツサッカー協会の監督ライセンス講座責任者)
3月7日に開幕するJ1において、個人的に注目している「トレンド」がある。それは「クラブが下部組織から自前で育てた監督が躍進するか?」ということだ。
今季のJ1にはこの1年以内に、自分たちの下部組織から指導者をトップに引き上げたクラブが3チームある。ベガルタ仙台、清水エスパルス、柏レイソルだ。
仙台は昨年4月、結果が出ないグラハム・アーノルド監督に代えてコーチの渡邉晋を昇格させた。渡邉は現役を仙台で終え、2007年まで仙台のアカデミーのコーチを務めていた“生え抜き”だ。昨季は苦しみながらも14位に踏みとどまって2部降格を阻止。続投が決まった。
清水も経緯が似ている。昨年7月、成績不振に伴いアフシン・ゴトビを解任。清水のユースを率いていた大榎克己をトップチームに昇格させた。その後、清水は15位で残留を勝ち取った。
昨年4位ながらも、“自前”の監督に交代した柏。
この2チームとは異なり、崖っぷちに追い込まれてないにもかかわらず、舵を切ったのが柏レイソルだ。昨季は4位になりながら、ネルシーニョ監督が退任。これまでに柏のU-15やU-18の監督を歴任し、2012年から強化部ダイレクターを務めていた吉田達磨が満を持して監督に就任した。
「1年以内」という制限を外すと、まさに湘南ベルマーレの曹貴裁監督が「自前監督」だ。湘南のジュニアユースやユースの監督を歴任し、反町康治監督の下でトップチームのコーチを務めた後、2012年に監督に就任した。アグレッシブなサッカーで昨季J2を席巻し、記者の中には日本代表監督に推す声もある。
これは日本だけで起こっている現象ではない。ブームになっているのが、ドイツのブンデスリーガだ。