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中村憲剛「カンプノウみたい」。
迫力と便利が両立の新等々力競技場。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKAWASAKI FRONTALE

posted2015/02/27 10:30

中村憲剛「カンプノウみたい」。迫力と便利が両立の新等々力競技場。<Number Web> photograph by KAWASAKI FRONTALE

そもそもは1941年の内務省の等々力緑地の都市計画に基づき、整備中の等々力緑地内に1964年より陸上競技場の建設が開始され、1966年より供用を開始していた。

メインスタンドの客席数を絞り込んだ理由。

 実は、新メインスタンドは客席数が約7200席しかない。これがいかに少ないかは、メインスタンドの規模が比較的近いスタジアムと比べてみるとよく分かる。

 新潟のデンカビッグスワンスタジアムのメインスタンドは約1万席、FC東京の味の素スタジアムのメインスタンドも約1万席あり、いずれも等々力の新メインスタンドより約2800席多い。

 これにも、明確な理由がある。

「来場者にとって使い勝手の良い席にしたかったので席数を間引いたんです。バラエティシートのところだって、普通のイスにすれば客席は増えるわけです。それから、縦通路も増やした。自分が座るときって、端っこがいいじゃないですか。縦通路を増やせば端っこの席も増えるし、内側の席の人だって7~8人に『ちょっとすいません』と言って前を通るの、嫌じゃないですか」

 サッカーを観戦した経験のある人には「そうそう、こんな風にしてほしかった」と思わせるような、かゆいところに手が届く配慮がなされているのだ。

トイレやコンコースにも“仕掛け”が。

 観戦者を第一に考えた“仕掛け”は、まだまだある。

 例えば、トイレ。個室内の壁に色が塗られ、使用してない個室のドアは常に開かれているため、遠くからひと目で使用中かそうでないかが分かる造りになっていて、おむつ交換台や更衣ブースも備わっている。

 コンコースとスタンドを壁で仕切らなかったのも、来場者を最優先に考えてのことだ。

「コンコースに並んでいる間に、壁の向こうから歓声が聞こえることってありますよね。“あー、ゴール、見られなかった”って。運営する側としては、壁を作ってゲートを設けたほうがチケットコントロールしやすいんですけど、来場された方が、コンコースにいても試合の雰囲気を味わえることを優先しました」

 逆に、旧メインスタンドの良さが維持されたのは、正面玄関の外、チームバスがスタジアムに乗り入れるエリアだ。選手が乗り降りする姿が見られ、選手と交流したり、選手たちを出迎えられたりできるように、旧来どおり、あえて高いフェンスは設けていない。

 選手を近くで見たい人は可動スタンド、選手と同じ目線で楽しみたい人は下層スタンド、仲間や家族と観戦したい人は各種バラエティシート、俯瞰して見たい人は上層スタンドというように、観戦者の様々なニーズに応えた等々力の新メインスタンド。ファン、サポーターが楽しむための最高の舞台は整った。あとは、チームが最高の結果で応えるだけだ。

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