詳説日本野球研究BACK NUMBER
野球選手の頭に機関銃???
“グローバルリーグ”仰天顛末記。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/26 10:30
グローバルリーグから帰国して会見する東京ドラゴンズ・森徹監督。プロ野球から縁遠くなった選手とアマチュアから成るチームは、過酷な状況をくぐり抜け、今こそ顧みられるべき成績を残したのだった。
東京ドラゴンズのチームカラーは「ケンカ野球」!?
開幕第1戦が0対6、第2戦が7対8と連敗スタートになるが、第3戦でエース古賀英彦がベネズエラ打線を6安打完封に抑え、初勝利(1対0)がもたらされる。
福井は古賀のピッチングを回想して「ヒザ下で勝負できた。セットポジションでテンポよく投げ、攻撃陣にもリズムが生まれた」と高く評価する。
東京ドラゴンズのチームカラーは、きれいに形容すれば「チャレンジ精神旺盛な攻撃野球」、ぶっちゃけて言えば「ケンカ野球」と言っていい。
古賀の快投によって初勝利がもたらされた第3戦、ベネズエラチームは走者が出ると執拗に1人の俊足選手を代走に送った。前に書いたようにグローバルリーグは1人の選手が何回も代走に出られるルールがある。森徹監督はファーストを守る関根勇に「あいつの足を潰せ」と指示を出す。
「ピッチャーのけん制球で一塁走者が帰塁したとき、向う脛をファーストミットで強くタッチするんです。ボールが入った網の部分でやるから相当痛いはずです。5、6回やりましたかねえ」と関根は笑うが、さすがにベネズエラの選手が怒って関根と喧嘩になり、日本チームは内・外野から、ベネズエラチームはベンチから選手が飛び出し、両軍総出の大乱闘になった。
第5戦でもタッチアップによるホーム生還のジャッジをめぐって関根が主審に掴みかかって退場処分を受ける。実績のない選手がプロ野球選手への復活、あるいはメジャーリーグでの活躍を夢見て、退路を断ってベネズエラでプレーする。そういう本気に取り組む姿がベネズエラの野球ファンの目にも新鮮に映ったのだろう。
「あいつらを日本に連れて帰ったらすごいぞ」
余談だが、ベネズエラの選手の躍動感あふれるプレーを見て森は「あいつらを日本に連れて帰ったらすごいぞ」と辻正孝に話している。
メジャーリーグで中南米の選手が活躍し始めるのが1970年前後なので、森の先見の明はさすがと言う他ない。