Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ネルシーニョと真逆の“所信表明”。
柏・吉田監督が初戦で見せたもの。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2015/02/18 16:30
Jで3年連続二桁ゴールを決めているレアンドロの得点力は健在。上背はないが一瞬の動きでシュートに持ち込む能力はリーグ屈指だ。
47本中、16本のシュートを一人で放ったクリスティアーノ。
なかでも効果的だったのが、左サイドからのアタックだ。左ウイングに入った新加入のクリスティアーノがドリブルで仕掛ければ、左サイドバックの輪湖直樹も高いポジション取りからクロスを連発。こうして左サイドからチャンスを作ると、ゴール前にはセンターフォワードのレアンドロ、右サイドからも工藤や武富孝介が飛び込み、ゴールを狙う。
ボールを保持して主導権を握ろうとするチームは、マイボールを大事にするあまり、パスを回してはいるが、フィニッシュになかなか持ち込めないことがある。
しかし柏はこの日、実に47本のシュートを放っている。とりわけクリスティアーノはシュートへの意欲が旺盛で、ひとりで16本のシュートを放った。
たしかに、エゴイスティックなプレーも多かった。だが、それでも吉田監督が「今日はとても良くプレーしてくれたと思う」と労ったのは、ビルドアップの場面では味方にシンプルにボールを預け、組み立ての流れを壊すことがほとんどなかったからだろう。
強引なプレーに走るのは、ゴール前だけ。その強引なフィニッシュが1、2本決まり始めれば、柏にとってこれ以上ない武器になる。この先、コンディションを整えた大津祐樹とのポジション争いも楽しみだ。
前体制に引き続き、やはり大谷の存在感は際立つ。
パスワークの生命線とも言える中盤では、4-3-3の左インサイドハーフに入った大谷秀和の気の利いたポジショニングが光っていた。
右インサイドハーフの武富のやや後方にポジションを取ったり、アンカーの茨田陽生と並んだり、サイドに流れてみたりする。大谷のポジショニングひとつで中盤のバランスが自在に変わり、武富の飛び出しや、茨田の負担を軽減するのにひと役買っていた。
ネルシーニョ体制では、守備時にはボランチ、攻撃時には左サイドバックに移るなどして戦術の鍵を握っていたが、現体制でもキーマンになりそうだ。その大谷が言う。
「もうそれほど戸惑いもないですし、もっと試合をこなしていければ、よりスムーズにできるようになるとも感じています。相手の視線を中盤の3人に集めればサイドはもっと楽になるし、真ん中から崩すことももっと突き詰めていきたい」