セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
再建遠いミラン、問題は2人の老人?
一貫性のない安値補強は終わるのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/02/12 10:40
ミランで長年にわたり絶大な権力を握るガッリアーニ副社長兼CEO。CLを5回、スクデットを8回獲得した手腕も最近は翳りがち。晩節を飾ることはできるのか。
オーナーの厳しい経済状況に、ミランの赤字が追い討ち。
オーナーの元首相シルビオ・ベルルスコーニにとって、ミランは政治アピールのための最高のパブリシティ装置だった。'86年にクラブを買収した後、元首相がミランに注ぎ込んだ金額は、総額6億5千万ユーロに上るとされている。
今でもベルルスコーニはイタリア有数の大富豪だが、ファミリーによる持ち株会社「フィニンベスト」は、'13年までの2年間だけで総額7億1200万ユーロに上る巨額赤字を計上した。シルビオにとっては自身の政党の借金の穴埋めや、2度目の離婚による元妻への扶養料(月額300万ユーロ)など痛い出費が重なっている。
さらにここ数年持ち直していたミランの収支バランスシートも、昨年は大幅赤字へ再び転じた。出場しないCLの収入を前提にした予算編成のまま組織運営を続けているのだから、赤字が減るわけがない。
ガッリアーニは、移籍金の釣り上げ競争に背を向け、コネと搦め手を最大限に駆使しながら、MFカカやFWトーレスなど、名の売れた選手たちを次々にミラネッロ練習場へ連れてきた。一時は彼の手法は、“錬金術”と持て囃されたほどだった。
「チームの半分がレンタル選手では一体感は生まれない」
だが、確固とした将来へのビジョンや熱意ではなく金勘定を優先させて作られたチームには、忠誠心が根付かない。レンタル選手からは腰かけ気分が抜けず、チーム内には競争心が生まれない。
最近筆者は、サッスオーロのディ・フランチェスコ監督に話を聞く機会があった。サン・シーロでの17節でミランを破った気鋭の指揮官は、指導者としてセリエAに初めて挑んだ3シーズン前、レッチェで解任の憂き目に遭った。
「チームの半分がレンタル選手だった。どうしても本当の一体感は生まれなかった」
そう当時を嘆いた言葉が印象的だった。
チーム作りは、フロント主導で進めるのがイタリア流だ。つまり、ミランの窮状に対するガッリアーニ副会長の責任は相当に重い。今年の夏に御年71歳になる彼へ、ミラニスタたちが引退を迫るのもうなずける。