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吉田麻也が語る好調サウサンプトン。
CL出場、契約延長、名前表記変更。
posted2015/02/10 12:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
AFLO
1月下旬。吉田麻也はサウサンプトンの練習場に向かって車を走らせていた。
クラブハウスに到着すると、ロッカールームのモニターではテニスの全豪オープンの中継が流れている。欧州から地球の反対側に位置するオーストラリア。つい2、3日前まで自分がいた国が、画面に映る。
アジアカップ準々決勝・UAE戦。あんなところで躓くはずではなかった。まだ、彼の地で戦い続けているはずだった。そんな考えに、思わず駆られてしまった。
「不思議な感覚に陥りました。つい数日前まで、僕は全豪の試合を同じ国でテレビ観戦していた。でもいまは、こんなに時差のある場所で観ている。まだあそこに僕たちはいたはずだったとか思ったりもして。
イギリスはオーストラリアからものすごく遠い。だから余計に、もうここにいることが信じられなかったというか。人生は、本当に些細なことで変わってしまうんだなと感じています」
悔やんでも悔やみきれない、UAE戦でのPK負け。吉田は優勝するかどうか以上に、価値あるモノを失ったことを強調した。
「優勝できるかできないかはまた別として、ただ準決勝以降の対戦や厳しい試合を経験することで、チームや選手はまた一段と成長していくもの。ああいう公式戦のピリピリした空気感でないと得られないものは間違いなくある。だからオーストラリアや韓国とタイトルを懸けた状態で戦えなかったことが、日本や特に若い選手たちにとっては本当に痛かったと思います」
吉田もまた、イギリスでの日常を再開している。
当然、過去は取り戻せない。日本は負け、それでも選手たちの戦いの日々は続いていく。昨年のブラジルW杯で苦杯をなめ、アジア王者からも陥落した。ここから、日本の選手たちがその悔恨を一気に取り戻せるような近道など存在しない。目の前の試合を一つずつ戦い、それが成長の積み重ねになると信じるしかない。
そして吉田もまた、イギリスでの日常を再開している。