セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
再建遠いミラン、問題は2人の老人?
一貫性のない安値補強は終わるのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/02/12 10:40
ミランで長年にわたり絶大な権力を握るガッリアーニ副社長兼CEO。CLを5回、スクデットを8回獲得した手腕も最近は翳りがち。晩節を飾ることはできるのか。
ガッリアーニに“後進へ道を譲る”という発想はない。
ただし、彼を権力の座から引きずり下ろすことは容易ではない。
ガッリアーニは、ミランという一クラブの経営幹部であるだけでなく、セリエAリーグ機構の副会長という要職も兼任している。国外においても、欧州クラブ団体「ECA」の創設メンバーの一人として、UEFA上層部にも睨みが効く要人中の要人という顔も持っている。
さらに一度手に入れたポストや既得権益にしがみつくことにかけては、イタリア人の執念深さはかなりのものだ。
クラブCEOとしての契約を18年まで(あと3年!) 残すガッリアーニは、“後進へ道を譲る”などといった発想はまず持ち合わせていない。彼へ口出しできる人間も長い間、オーナーであるシルビオ・ベルルスコーニ以外存在しなかった。ガッリアーニは、ミランの内部でアンタッチャブルな存在だったのだ。
ガッリアーニを猛然と批判した“バルバラの乱”。
それだけに、'13年11月の“バルバラの乱”は、内外に衝撃を与えた。
シルビオ・ベルルスコーニの娘であり、当時すでにミランのフロントの一人だったバルバラは、成績低迷に憤り、公然と上役ガッリアーニの経営手腕を批判した。彼女は、慌てふためいた父親から副会長昇進の辞令を勝ち取り、自らの内部権力を増大させた。
グラウンド以外の全権を握った野心家バルバラは、今季から新本部ビルを本格稼働させた。さらなる一手として、先日新スタジアム建設計画も発表したばかりだ。
ミラノEXPO開催後のパビリオン跡地を利用する形で、2億ユーロともいわれる建設資金をすべてスポンサーによる出資で賄うところまで算盤を弾いている。
バルバラの賢明な点は、サッカーの門外漢であることを自認し、現場を専門家へ一任する姿勢を打ち出していることだ。ガッリアーニが退任すれば、かつて画策した敏腕フロント、ソリアーノSD(現ベローナ)の引き抜きやOBの要職招聘へ即座に動くにちがいない。
コネ社会の欧州にあって、顔役であるガッリアーニがクラブを去った場合、ミランは有形無形の不利益を被ることになるだろう。だがそのジレンマを乗り越えない限り、ミランが欧州の列強クラブの一員に返り咲くことは難しい。