岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
ラグビーは“わかりやすい”競技!?
岩渕健輔が語る「原点回帰」とは。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2015/02/04 10:30
日本代表とマオリ・オールブラックスとの親善試合では、秩父宮ラグビー場に2万人を超える観客が集まり、2004年以降で最多記録を更新した。
野球と差がついた理由は「観る機会」の差。
日本における野球とラグビーのイメージは、どうしてこれほど違うものになったのでしょうか。要因としてはやはり「目にする機会が減ってきた」ことが大きいと思っています。
あれだけルールの複雑な野球が日本で国民的なスポーツとして普及したのは、やはり身近な存在だったことが大きいでしょう。お父さんがお茶の間でナイターを観ているうちに、なんとなく親しみを覚えたという方は多いはずです。
かつては、ラグビーも似たような恩恵に与っていました。冬の人気スポーツとして定着していたために自然と目にする機会も多く、現に'80年代から'90年代にかけては、女性のファンも多く試合観戦に来ていました。今日では難しいとされるルールも当時はほとんど問題にならず、単純に試合を楽しむことが皆できたのです。
しかし一旦人気が落ちれば、このような土壌は失われていきます。競技に接する機会が減るために、難しくてわかりにくいという印象が生まれ、さらにラグビーに親しむ人が少なくなっていくという悪循環に陥りました。
つい細かいルールの話をしてしまう、という習慣。
さらにもう一つ、ラグビー=難しいスポーツというイメージの背景には、私たち伝え手の責任もあるかもしれません。
サッカーや野球を子供たちに教える場合、指導者は「ボールを蹴ってゴールに入れよう」「飛んで来た球をバットで打ってみよう」という、簡単なところから教えます。本来ならばラグビーも「何をやってもいいから、ボールを向こう側に運んでみよう」と声をかけるところから始めるのがスムーズなはずですが、現実にはつい「ボールを落としたり、前に投げてはいけない」という禁止事項の話から伝えてしまう傾向がありました。
同じことが、大人に対するアピールの仕方についても言えると思います。
おそらくモールラックというプレーなどは「あれは一種のおしくらまんじゅう。誰がボールを持っているのかを悟られないようにしながら、押していけばいいんです」のように説明するのが一番簡単だと思います。しかし私たちは丁寧に解説しようとするあまりに、どうしても細かなルールを口にしてしまいがちになる。
これは一例に過ぎませんが、ライトなスポーツファンや女性の方々に対して、自由でシンプルなスポーツだという特徴を十分にアピールできていませんでした。