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大鵬は早熟、千代の富士は晩成……。
「優勝パターン」で白鵬の今後を予想。
posted2015/01/26 11:50
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
中学3年生の時、英語を担当していた先生が、宮城県・南三陸町の志津川中学校で校長を務めていた。
2011年3月11日(奇しくもこの日は白鵬の誕生日である)、東日本大震災で大きな被害を受けたが、6月6日に横綱・白鵬がやってきた。校庭で行われた土俵入りは素晴らしかったという。
「四股を踏んで、大地を鎮めているようだった」
白鵬が、大鵬を超えた。
幕内33回目の優勝は歴代トップ、NHKで解説を務めていた北の富士が、
「32回目の優勝の時はなんとも思わなかったけど、33回となると複雑なものがあるね」
と話していた。北の富士は大鵬と対戦経験があるだけに、これが本音だと思う。
白鵬の最大の功績は、相撲界に安定をもたらしたこと。
白鵬の最大の功績は、大相撲界に安定をもたらしたことだと思う。
朝青龍の八百長疑惑が報道されたのは2007年1月のこと。同じ年の7月場所に白鵬は横綱に昇進したが、それから2010年2月に朝青龍が引退、さらに野球賭博問題が発覚するなど角界は揺れに揺れていた。白鵬はひとり、淡々と横綱の責務を果たした。
土俵の上での安定感が何よりの証拠である。白鵬の金星配給数はわずか9個。最近では2014年九州場所で平幕の高安に敗れたが、実に1年10カ月ぶりの金星配給。平均すると、5場所にひとつしか金星を与えない。取り口にゆるみがない証拠である。
優勝インタビューのなかで、
「横綱に昇進して8年、本場所も巡業も一日も休まずに勤めてきました。頑張れるのは、神様が認めてくれたからだと思います」
と話していたのが印象深かった。
休まず、強い。
白鵬が安定しているからこそ、遠藤、逸ノ城といった若手が台頭するチャンスも出てきて、それを受けて立つ構図がこれからの相撲を盛り上げるに違いない。