セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インザーギ、モンテッラ、ストラマ。
アラフォー監督たちの「出世競争」。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/12/25 10:50
アラフォー監督3人にディ・フランチェスコ(左)を加えた4人は、戦術談義に花を咲かせた。
平等主義を貫くインザーギ。
細かい戦術分析を施した新人指揮官インザーギが繰り出したのは、恩師と慕うアンチェロッティ(R・マドリー)がミラン時代に編み出した伝家の宝刀“クリスマスツリー(4-3-2-1)”だった。相手中盤のスペースを突く狙いは的中し、2-0の快勝を収めた。
ただし、「ツリーは、まだ若木だ」と副会長ガッリアーニが指摘したように、チームの根と幹になるプレーの型が確立していないことは、インザーギ本人が誰より痛感しているはずだ。
チーム全員へ平等にチャンスを与えよう、と選手感情を大事にする彼の采配術も、ロッカールーム全体に公平感を与える反面、行き過ぎた平等主義が勝負への執念を失わせるリスクがある。
師であるアンチェロッティは、今でこそ押しも押されもせぬ名将扱いだが、指導者キャリアを始めた当初、ユーベで挫折と屈辱を味わっている。インザーギもまた指導者としての壁にぶち当たって当然なのだ。
インテルでの蹉跌を乗り越えたストラマッチョーニ。
2シーズン前の蹉跌を乗り越えたストラマッチョーニは、今季からウディネーゼで、監督として再出発した。
インテルの監督として大抜擢を受け、初めてフルシーズンの采配をまかされた2年前、アルゼンチンの重鎮選手たちや問題児カッサーノ(現パルマ)を御しきれず、9位という大失態を招いたストラマッチョーニには、解任という苦い結果が待っていた。
浪人期間中、グアルディオラ(バイエルン)の指導法を研究し、再起を図るにあたってウディネに赴いたストラマッチョーニは、コーチ候補として、現役引退したばかりのスタンコビッチに声をかけた。インテル時代には口論したこともあったが、互いの信頼関係を確信していたスタンコビッチは、二つ返事で引き受けた。
「ストラマはサッカーの偏執狂さ(笑)。彼の脳ミソはつねに時速300kmで物事を考えている。一流のプロだ」
組織内で孤立無援だったインテル時代とちがい、一目置いていた強面のスタンコビッチを副官に迎えたことで、ストラマは落ち着いて采配に集中できるようになった。
今季序盤の開幕5戦で4勝を挙げ、上々の滑り出しを収めたまではよかったが、そこから選手たちが気を緩め、ペースダウンした。だからこそ、サンシーロに乗り込んだ古巣インテルとの14節を、正副2人の指揮官は仕切り直しの「特別な試合」と位置付けた。