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抗えば抗うほどに悪化した「流れ」。
J2降格のC大阪にビジョンはあったか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/12/01 16:30
2009年の昇格以来、6年ぶりにJ2に降格するセレッソ大阪。香川真司、乾貴士らOBは現在のチームをどう見ているのだろうか。
セレッソに欠けていた「スタイル」。
若く優秀な選手が海外移籍を望むのは致し方ないことであるし、チームもそれを容認してきた。また、毎年新しい血を入れ、競争を促進するのはチームにとって重要なことだ。
だが結果的に、ほぼ毎年攻撃のポジションで主力が入れ替わるという事態に陥った。そのせいか、チームのスタイルが根付く前に、選手の個性がそのままチームのスタイルになっていた。さらに今季は監督のミスマッチもあり、守備に重点を置く戦い方にチームが混乱した。培ってきたスタイルを失い、ヴィジョンは見えなくなった。
今さらではあるが、2010年以降に何かひとつでもタイトルが獲れていれば、それが自信になり、セレッソ独自のスタイルを完成させることが出来たのかもしれない。チーム状態が悪くなっても、チームを再起動する参照点になるような“セレッソスタイル”を作り上げるチャンスはあった。しかしこの5年間、毎年のように優勝候補に挙げられながらもタイトルを1つも獲れず、川崎や浦和のような明確なスタイルを確立することができなかった。
主力は残留、クラブはビジョンの提示を
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言うまでもなく降格したこの瞬間から、次の動きがセレッソの未来を占う重要なキーになる。「若手育成型」を標榜するだけではなく、チームのスタイルをどうすべきなのか。どういうチームにしていきたいのか。バルセロナなど魅力ある強いクラブには一貫したスタイルと明確なビジョン、そしてそれを実現するための指針がある。新監督の選考をはじめクラブがそれをしっかりと示せば、選手もサポーターも気持ちを切り替えて次へと向かえるだろう。
「自分たちの育ったクラブですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
扇原は、そう言った。
幸いなことに、セレッソにはクラブ愛が強い選手が多い。山口や南野、杉本健勇らユース出身の主力選手が残留するなど、再スタートへのベースが出来れば柏レイソルやガンバ大阪のように1年でJ1に復帰し、再び優勝争いができるチームに進化させることは可能だ。
選手やサポーターが流した悔し涙を1年後、歓喜の涙に変え、さらに強いチーム作りを実現するために、セレッソというクラブのマネジメント能力が試されることになる。