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明治神宮大会で見つけた原石たち。
高校は東日本勢、大学は投手が豊作。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/11/23 10:40
決勝の明大戦では6回から登板、無失点に抑えて駒大に13年ぶり5度目の栄冠をもたらした3年生エース・今永昇太。更なる成長が期待される、来年のドラフト1位候補の大型左腕だ。
好投手が目立った今回の明治神宮大会。
決勝までの9試合を見ても、僅少差の好ゲームが多かった。得点差が大きかったのは初日・創価大9-2富士大と2日目・明大9-0徳山大の2試合だけ。あとの7試合は4点差が1試合、3点差が2試合、2点差が2試合、1点差が2試合と接戦が多かった。当然、好投手が目立った大会と言える。
9-2と点差が離れた創価大対富士大にしても、富士大の多和田真三郎(3年)が3回3分の2を投げ7失点でノックアウトされた試合ではあったが、最速151kmの快速球と、135km程度のカットボールのキレは来年のドラフト1位候補の名に恥じないものだった。
ヤクルトに2位指名された剛腕・風張蓮(東農大北海道オホーツク)は初戦の京都産業大戦で一塁ベースカバーに入った際右足を故障、わずか16球の顔見せに終わった。その穴を埋めたのが同校の本格派、井口和朋(3年)で、京都産業大戦ではストレートが最速145kmを計測し、さらに縦変化のスライダーとチェンジアップの切れ味も素晴らしく、風張の不在をしばし忘れさせた。
150kmを超える創価大・田中正義のパワーピッチング。
今大会2度目の延長戦となった準々決勝の関西大対創価大戦も小松貴志(創価大・3年)、田中正義(創価大・2年)、石田光宏(関西大・3年)という来年以降のドラフト候補が登板した。
小松は142kmのストレートに縦割れのスライダー、チェンジアップ、カーブ、フォークボールを交えた緩急に冴えがあり、8回を1失点に抑えた。対する石田は最速145kmのストレートはここぞというときまで取って置き、カウントを作るのは主にスライダー、カットボールの横変化で、追い込めばストレートと打者近くで鋭く落ちるフォークボールでバッターを料理にかかる。6回までに許した走者はヒットと四球の2人だけという迫力で、2回から3回にかけては4者連続三振を記録している。見事というほかない。
創価大の田中は9回からリリーフに立つと、まずここを0点に抑え、10回はタイブレークのためいきなり1死満塁という後がない状況に立たされる。タイブレーク制は先攻の勝率が高いというデータがあるが、田中は3、4番を連続三振に斬って取る。この伏線となったのが9回に最初の打者を三振に取った場面だ。
ストレート152km(ファール)→ストレート145km(ファール)→フォークボール137km(ファール)→ストレート153km(ボール)→フォークボール139km(ファール)→外角低めフォークボール138km(三振)
フォークボールを3球投げているのがわかるが、タイブレークで迎えた10回表の2人には9球中、フォークボールは1球しか投げていない。それでも2人の打者はフォークボールの残像に怯え、腰の入ったスイングができなかった。常時150km以上のストレートを投げる投手にだけ許されたパワーピッチングと言っていいだろう。