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明治神宮大会で見つけた原石たち。
高校は東日本勢、大学は投手が豊作。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/11/23 10:40
決勝の明大戦では6回から登板、無失点に抑えて駒大に13年ぶり5度目の栄冠をもたらした3年生エース・今永昇太。更なる成長が期待される、来年のドラフト1位候補の大型左腕だ。
「東高西低」のイメージの源泉は?
全体的な印象としては、東日本勢の優位が目立った大会だ。西日本勢で勝ち上がったのは九州学院1校だけで、その九州学院も準決勝では仙台育英に7回コールド負けしている。今年の甲子園大会は春が龍谷大平安、夏が大阪桐蔭の優勝なので東高西低は今のところ秋だけの現象だが、明治神宮大会では過去10年、駒大苫小牧、常葉学園菊川、慶應、大垣日大、日大三、光星学院(現八戸学院光星)、仙台育英、仙台育英と東日本勢がのべ8校優勝している。私の頭にある「東高西低」のイメージはこのあたりが原因になっているのかもしれない。
仙台育英の優勝によって、東北地区に明治神宮枠が与えられるので、来年春の選抜大会では一般選考2校と明治神宮枠1校の計3校が最低でも東北地区から選出される。悲願の「東北地区による甲子園制覇」が来年あるかもしれない。
明治神宮大会の大学の部は好ゲームが目白押し。
大学の部では決勝の明治大対駒澤大が名勝負だった。
「打者走者の一塁到達4.3秒未満」を満たす全力疾走は、駒大の3人4回に対して明大は5人7回。両校ともよく走っている。江越大賀(駒大4年・阪神ドラフト3位)、高山俊(明大3年)の両センターによる好守の応酬があり、投手陣は先発した東野龍二(駒大1年)と山崎福也(明大4年・オリックスドラフト1位)が緩急やコーナーワークを駆使して全力で打者を打ち取りにかかった。
こんなにいい試合はいつ以来だったかと過去の大会を調べると、1、2点差の僅少差ゲームが過去43回大会中30試合もあった。つまり明治神宮大会決勝戦の好ゲーム率は70パーセントにもなる。
新チームによる最初の全国大会という高校の部に対して、大学の部は4年生最後の大会という位置づけになる。4年生が有終の美を飾ろうと120パーセントの頑張りを見せれば、下級生は4年生を気持ちよく送り出そうと全力プレーを心がける。好試合が多いのは秋に行なわれる明治神宮大会の特徴と言っていいだろう。
決勝に進出した駒大、明大両校の中でドラフト指名されたのは、先述したように山崎と江越の2人。そして、来年の1位候補には今永昇太(投手・駒大3年)、上原健太(投手・明大3年)、高山俊(外野手・明大)が控え、この5人がそれぞれ存在感を発揮しているのである。好試合にならないわけがない。