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北九州はなぜ3位を目指すのか。
J1昇格を断たれたクラブの“意地”。
posted2014/11/20 10:40
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by
J.LEAGUE.PHOTOS
意地をかけた戦い。
まあ文字にしてしまえば陳腐な表現でもあるのだが、11月23日にニッパツ三ツ沢球技場でのJ2最終節に登場するアウェーチームには、これがぴったり当てはまる。
横浜FCvs.ギラヴァンツ北九州。
逆に言えば意地しかかかっていない。
タイトルが懸かるわけでもなく、何かの歴史が変わるわけでもない。
それでも、世界サッカー史にも存在しえないような意地がある。小さな地方クラブ・ギラヴァンツ北九州の2年がかりのストーリーだ。
“J1ライセンスがないのに、J1昇格プレーオフ圏内にいる”。
シーズン中、ギラヴァンツ北九州の状況について様々な声を聞いた。たいしたもんだ、という賞賛が半分。でも昇格できないんだよね、という皮肉もまた半分。
最終節、横浜FC戦に勝てば、シーズンを3位で終える可能性がある。2012年にプレーオフが導入される前なら、自動昇格できた順位だ。
J1ライセンス問題で、一度は瓦解したチーム。
柱谷幸一監督率いるチームは、2013年にゼロに近いかたちからスタートした。三浦泰年前監督の下で9位でシーズンを終えた2012年の9月、Jリーグから「J1ライセンス」が発給されないことが発表になった。本拠地にしている本城陸上競技場が、収容人数などの問題でJ1クラブの基準に満たないと判断されたためだ。ここに三浦前監督の退任が重なり、チームからは一気に22人の選手が移籍した。
2013年シーズンの開幕前のことだ。新加入ながら主将を任されたDF前田和哉がこんな決意を口にしていた。
「昇格できる順位に入れば、何かが変わるかもしれない。あわよくば優勝争いをして、議論を巻き起こしたいですよ」
前田はかつてはJリーグ優秀新人賞にも輝いた屈強なDFだ。年齢を重ね、セレッソ大阪では出場機会を失っていった。そしてモンテディオ山形を経て、このクラブにたどり着いた。
「議論を巻き起こしたい」とは、そんな前田の気概に満ちた言葉だった。