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北九州はなぜ3位を目指すのか。
J1昇格を断たれたクラブの“意地”。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJ.LEAGUE.PHOTOS
posted2014/11/20 10:40
ギラヴァンツ北九州で、今季はリーグ戦41試合中37試合に先発出場している前田和哉。ディフェンスラインに前田がいることは、チームの精神的なよりどころになっている。
「行けそうな時間帯」にかける猛攻。
ただし柱谷の言うように、多くの強化費をかけて構成するチームではないから、必然的に守備に追われる時間が多くなる。
基本的にはサイドバックの攻撃参加などを控えつつ、「行けそうな時間帯」を見極めて、手数をかけずにゴールに迫る。その時間帯が終わると、再び耐えながら時が来るのを待つ。決して派手ではない、玄人好みのエコ・サッカー。まるで“環境未来都市”を宣言する北九州市の姿を体現しているよう、と言ったら言い過ぎか。
もちろん、戦術だけではチームは変わらない。絶望的、とすらいえるチームに集まった選手たちは、厳しい状況のなかでも高い結束力を発揮していた。主将でCBとして守備の軸となった前田がいう。
「自分たちが縁あって契約したクラブをどうにかしたい、なんとかしたいという思いで戦ってきました。全員がこの思いで結束しているんです」
スタジアム建設のために選手ができることは少ないけれど。
悲観していても仕方がない。その思いが、まとまりを生み出している。
「正直、2013年に移籍してきた時にはクラブ体制がまだまだなところがあったんですよ。だから特に自分と同じようなベテランの大島(秀夫)さん、富士(祐樹)さん、宮本(亨)くんは周囲に気を配って、変えていこうとした。
多くのクラブを経験している大島さんに気づいたところを指摘してもらったり。みんなこのクラブに来た背景は様々です。ここにしか来られなかった選手もいるし、ここで挑戦することを選んだ選手もいる。もちろん若い選手の中には『一年も早くJ1に行きたい』という個人的な思いもあるでしょうが、今はこのクラブのために戦うという気持ちで一致している。
ピッチ上の選手が、新スタジアムの建設時期を早めることは簡単には出来ないかもしれない。でも、何かひとつでも自分たちが形を示そうと」
自分たちがまずやる。そういった姿勢は、少しずつであるが身近なところでも実を結ぼうとしているのだと。前田は続ける。
「今では、チームのマネージャーの方が必死にやってくれていることを強く感じています。なんとか気持ちよくピッチに送り出そう、と。すると自分たちもより頑張ろうという気持ちになる」