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北九州はなぜ3位を目指すのか。
J1昇格を断たれたクラブの“意地”。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJ.LEAGUE.PHOTOS
posted2014/11/20 10:40
ギラヴァンツ北九州で、今季はリーグ戦41試合中37試合に先発出場している前田和哉。ディフェンスラインに前田がいることは、チームの精神的なよりどころになっている。
北九州の強化費はJ2の22クラブ中19位。
一方で、実現にはかなりの困難が伴うようにも見えた。ただでさえ強化費が「J2の22クラブ中19位」(2014年のデータ)と低いうえに、J1昇格権がないという悪条件が折り重なった。
当然、集まる選手は他のクラブで出場機会を得られなかった選手がほとんど。前シーズンから残った選手がわずか7人という状況では「新たにチームがひとつ昇格してきた」に等しい状況だった。
柱谷とフロントの方針で、ほぼレンタル選手を加えない代わりに、大卒選手を積極的に獲得した。ファンとすれば、選手の名前を覚えるだけでも精一杯という状況だっただろう。
2013年のシーズンが始まっても、チームは5月上旬からしばらく降格圏の21位に沈むなど、大いに苦しんだ。残留を決めた時、柱谷幸一監督は「降格の危機まではそれほど考えなかった」と口にしたが、状況は明るいものではなかった。最終順位は22チーム中16位。観客動員数もホーム1試合平均で3175人とJ2最下位の数字だった。
チョウ・キジェ「北九州はぶれないで戦えるチーム」
そんなチームが今季、最終節を前に3位を狙える位置にいる。11月9日、ホームに湘南ベルマーレを迎えた。最終的に力の差を見せ付けられ0-4と敗れたが、ぶっちぎりのJ2優勝を果たした湘南のチョウ・キジェ監督は北九州をこう見ていた。
「ぶれないで戦えるチーム。選手全員が一体感を持ってひとつのスタイルを信じてやっている。たとえ相手にボールを持たれても、失点を喫しない守備の仕方を徹底してやっている。攻撃のところは、池元(友樹)、原(一樹)、渡(大生)といった選手のキープ力を活かして、ミドルシュートを決めてくる。そこを選手全員がやりきっているのは素晴らしい。現に被シュート数が多く、シュート数が少ないはずなのに上位にいますからね」
いったいどんな変化があったのか。
柱谷はシーズン中もたびたび、「自分たちのチームは強化費が22チーム中19位」という点を強調していた。
同時に自身を「オーソドックスな監督」とも。4-4-2で戦うチームは攻撃的でもなく、特にサイドを重要視したりすることもなく、あるいは極端に守備的でもない。