プレミアリーグの時間BACK NUMBER
時間を巻き戻した“英雄”ドログバ。
チェルシーの頼れる「第3FW」復活!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/11/01 10:40
恩師モウリーニョに呼び戻され、往時の得点力を発揮しつつあるドログバ。ベテランらしいしぶとさも光る。
戦力として計算できなかった開幕2カ月間のドログバ。
実際、開幕2カ月間のドログバは、ピッチ上の戦力とは呼べない状態だった。今夏の移籍市場で総入れ替えされたFW3名中の序列では、開幕からゴールを重ねたジエゴ・コスタと、9月半ばのデビュー戦をゴールで飾ったロイク・レミに次ぐ3番手。
同月のCLグループステージ第1節シャルケ戦で、再加入後の初先発が精彩を欠く74分間に終わった段階では、当人が「コンディション不足」を訴えていても、メディアでは「斜陽」どころか「終焉」という言葉が容赦なく用いられた。
しかしそこは「腐ってもドログバ」である。
全盛期のスピードはとうに失われていても、ここ一番での頼もしさは失われていなかった。しかも、その事実を敵地でのマンU戦で示すあたりが、ビッグゲームでの強さで知られたドログバらしい。
オールド・トラッフォードでの一戦では、ジエゴとレミが揃って故障中だったにもかかわらず、ドログバ先発を予想する声は少なかった。5日前のCL戦で、レミの負傷退場で出番を得てPKを決めたものの、チームが格差歴然のマリボルを大破(6-0)する中で、自身は追加点を上げられなかったことも影響したに違いない。
加えてモウリーニョには、「ストライカーがいない」とFWの決定力不足を嘆いた昨季、アウェイでのマンU戦で「0トップ」を採用した経緯があり、物理的にFW不足だった今回もアンドレ・シュールレの「偽9番」起用が予想されていた。
悲観論をたった1試合で一蹴し、再びスターダムに。
ところが、今季のモウリーニョはドログバの1トップを採用した。そしてドログバも監督の信頼に応えた。ニアポストに走り寄ってCKに合わせたヘディングには、2年前のCL決勝で延長戦突入を決めた、フルタイム目前の同点ゴールを彷彿とさせる頼もしさが感じられた。
同時に、やはり衰えないフィジカルを生かしたオールラウンドな存在感もメディアに評価された。『テレグラフ』紙のように、「見上げた運動量」と90分間の貢献を讃えた高級紙もある。開幕2カ月間で強まったメディアの悲観論を、たった1試合で一蹴した恰好だ。