プレミアリーグの時間BACK NUMBER
時間を巻き戻した“英雄”ドログバ。
チェルシーの頼れる「第3FW」復活!
posted2014/11/01 10:40
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Tomoki Momozono
10月26日のマンチェスター・ユナイテッド対チェルシーは、今季のリーグ戦3敗目が予想されたマンUが、無敗で首位を走るチェルシーから1ポイントを奪い取る引分け(1-1)となった。
土壇場の同点ゴールを目撃したオールド・トラッフォードの観衆は、不屈のサー・アレックス・ファーガソン監督時代を思い出したことだろう。一昨季までのマンUは、「ファーギー・タイム」と呼ばれた後半ロスタイム中の反撃が当たり前だったのだ。
この日のチェルシーは、攻勢を強めた後半にリードを奪い、ボランチのジョン・オビ・ミケル投入による守備固めで3ポイント確保を図った。しかし93分にDFのブラニスラフ・イバノビッチが退場を命じられ、直後のセットプレーから追いつかれ、2ポイントを失った。
だが、失意の試合終了を迎えたチェルシーでも、1人の選手が往年の勇姿を取り戻しつつある。1トップで先発フル出場を果たしたディディエ・ドログバだ。53分からの40分間、チェルシーに勝利をもたらすと思われたゴールは、36歳のベテランが得意のヘディングで決めたものだった。
“英雄”のステータスは変わらないが……。
今季、2年ぶりのチェルシー復帰が実現したドログバは、ファン投票でクラブ史上最高の選手に選ばれた過去を持つ“ブルーズ”の英雄だ。そのステータスは、中国とトルコで違った色のユニフォームを身にまとった後でも変わっていない。
但し、絶対的なセンターFWの地位は、もはやドログバのものではあり得ない。最終ラインの裏に颯爽と飛び出し、力強く相手ゴールのネットを揺らす得点パターンは、自らのPKで決めたCL優勝を置き土産にチェルシーを去った2012年の時点で既に影を潜めていた。
チェルシー指揮官として2度目のドログバ獲得を決めたジョゼ・モウリーニョは「過去の名声ではなく、現在の実力を評価しての補強だ」と語っている。しかし、その「補強」は、フランク・ランパードとアシュリー・コールが同時に抜けたチームに経験豊富な古株を呼び戻すことによる、精神面での効果が主になると思われた。