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武藤嘉紀のドリブルはなぜ通用した?
4日間で修正した「パワーとスピード」。
posted2014/10/22 10:30
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Takuya Sugiyama
倒されても、倒されても、また起き上がる。それでも武藤嘉紀がボールを持つ度に、相手DFは体のあらゆる場所を使い、強引にでも止めに来た。
「試合の途中で、相手選手同士の会話が聞こえてきたんです。『ファウルでもいいから』と」
10月18日、J1リーグ第28節。FC東京は、アウェイで大宮アルディージャと対戦していた。武藤は試合中、終始激しいマークに苦しみ続けた。
今や、完全に“時の選手”。
9月の日本代表デビュー時には、“現役慶應大プレーヤー”や“イケメンアタッカー”と注目を集め、そしてベネズエラ戦で代表初ゴールを奪ってみせると、報道の熱はさらに激化。試合や練習の合間を縫って、連日の取材攻勢を受けた。夏場以降、ほぼ休みなしに走り続けてきた武藤。疲労のピークは、今かもしれない。
各世代でも代表歴がない武藤は、国際舞台自体が初体験。
大宮戦の4日前、武藤はシンガポールのピッチに立っていた。目の前にいるのは、世界最高レベルのカナリア軍団。初めて対峙したブラジル代表に少しでも自分の爪痕を残そうと武藤は必死だった。
アギーレジャパンの10月の対戦相手はジャマイカ代表とブラジル代表。初戦を新潟で戦ったあと、すぐに開催地となるシンガポールに移動する強行日程は、これまでアンダー世代でも代表歴のない武藤にとってはもちろん初めての経験だった。
「暑いですね! でも汗が出て気持ちいいです」
シンガポールでの初練習では、新潟で着込んでいた長袖を抜き捨て、汗だくになりながらも爽快な表情をしていた。
国際舞台自体がほぼ初体験である武藤にとって、先月のウルグアイ、ベネズエラ戦も「国内では得られない刺激を受け、課題も浮き彫りになった」ものだった。
そして今回の相手、ジャマイカとブラジルはそれぞれ違った特徴を持った相手だ。かたや黒人選手が主体となっており、あのウサイン・ボルトにも代表されるような身体能力が特長の国。そして、もう片方は言わずと知れたサッカー王国。こちらはテクニックもフィジカルも経験も、すべてがトップレベルだ。