武藤の思考に影響を与えた本田圭佑の存在。

　帰国翌日の東京・小平のFC東京練習場では、ブラジル戦直後の悔しさと反省に満ちたコメントとは違うポジティブな考えも武藤は語った。

「ジャマイカ戦が終わって、ブラジル戦に向けて、体をぶつけて前に出るプレーはだいぶ意識していました。だからあの突破のシーンはもう迷いなくできた。チャンスに生かせたという意味では、ブラジル戦までの短い時間でも成長できたと思います」

　そして、彼の思考と修正に影響を与えた選手の名前を挙げた。

「本田さんは、やっぱりすごく影響を受けます。見ているレベルが違うというか。先月は宿舎の食堂でもよく一緒になっていて、今回もロッカールームとかでは、いつも隣に呼んでくれました。そこでプレーに対するアドバイスも受けたし、意識に関する話もしたし。本田さんの、常に前を向いて進んでいく姿勢は勉強になります」

　Jリーグでも、武藤の前には次々と新たな課題が浮上している。たとえば18日の大宮戦では「ファウル覚悟で守備をしてくる相手を、どう凌駕していくか」というもの。シンガポール帰りの疲労も相まって動きのキレがなく、いつも以上にピッチに倒れる場面が多かった。

　ハードマークにボロボロになりながらも、70分、85分と惜しいシュートを放つ場面も見られたが、決めきれなかったことは「反省しかない」という。

「ここで耐えないと、これを乗り越えていかないと、あのブラジル戦での経験が生きないですから」

　課題と修正、そして成長を着実に繰り返す武藤嘉紀。そのループは、間違いなく彼を一段ずつ高い場所へ導いている。