プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“自己犠牲”徹底の巨人にどう挑む?
点が取れない阪神に必要な1つのこと。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/10/15 12:45
首位打者を獲得したマートンは、阪神打線のまさに中心。足や小技を絡めて確実に点を取ってくる巨人に対抗するには、打線の奮起が必要だ。
来日直後のセペダが見せた、バントの構え。
今季、ちょっと驚いたのは5月25日の日本ハムとの交流戦でのある場面だった。
1-0と1点リードの8回、無死一塁で来日直後のF・セペダ外野手が初球にいきなりバントの構えをしたことがあった。結果的にはこの場面は送りバントではなく、左前安打。その後に今度こそロペスが送ってチャンスを広げ、ダメ押し点を奪っている。
「チームに合流した直後にセペダにも『ウチのチームはこういう方針でやっている』ということは説明して納得させている。だからセペダもあの場面で送りバントがあると考えていたんだと思う」
原監督は平然とこう語ったのである。
問題は送りバントをやるかやらないか、ではない。キューバの至宝と言われたセペダでも、全盛期ともいえた3年前の阿部でも、巨人の選手に例外はないし、選手の意識としてもそれが徹底されている。
巨人の選手にはタブーはない。自己犠牲への意識の強さが、ここ数年の巨人の強さの本質なのだ。そしてその差が、そのまま終盤の勝負どころ、ペナントの行方を左右する勝負の場面での巨人と阪神の勝ち負けの差に出ているといえるのかもしれない。
ベンチが動くためには、形が必要である。
打率3割3分8厘で首位打者を獲得したマートンでもOPS(出塁率と長打率を足した数字でその打者の得点への力を示す)は.872に過ぎない。109打点で打点王を獲ったゴメスもOPSは.860である。この2人であっても、決して絶対的な打者ではないということだ。
ただ、この2人に上手くもないバントをさせろ、ということではない。だとすれば阪神がこの短期決戦でやらなければならないのは、何なのか? それはベンチが動く意識を徹底して、動ける形を作ることなのである。
例えば1番にファーストステージで当たっていた上本を置いて、2番は送りバント、エンドランができる大和を起用する。そうしてゴメスとマートンの間に、いざというときにはバントも出来る鳥谷敬内野手を挟むというのも一つの方法である。これなら西岡を7番に置けるので下位打線が極端に落ちるという打線の弱さも補えるはずだ。
また、9月の巨人戦でやった「1番・マートン」も1つの手になるだろう。出塁率の高いマートンを1番に据えて、2番に上本、クリーンアップは鳥谷、ゴメス、福留に任せて西岡を6番に回す。