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CSを制したSB秋山監督の「賭け」。
陰のMVPは“帰ってきた”大隣憲司。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/10/21 11:55

CSを制したSB秋山監督の「賭け」。陰のMVPは“帰ってきた”大隣憲司。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

CSを制し、お立ち台に呼ばれた秋山幸二監督は、大隣憲司を呼び寄せてともに勝利を祝った。今年での退任が決まっている秋山監督は、花道を日本一で飾ることができるか。

日本ハム・栗山監督も、攻めの采配を見せた。

 日本ハムも、その意識は顕著に現れていた。

 初戦は1点差ながら磐石の中継ぎ陣を登板させず、ルーキーの浦野博司を9回まで引っ張った。そうかと思えば、第2戦ではピンチを迎えるや中村勝を4回途中で諦め、第4戦も3回から木佐貫洋に代えて本来先発のメンドーサをマウンドに送るなど、早めの継投を行なった。そして第5戦は、ファイナルステージでは打者に専念するはずだった大谷翔平が先発。第6戦では大一番のマウンドを託した上沢直之を4回のピンチで見切りをつけるなど、多彩なブルペンワークが目立った。

 仮に日本ハムがソフトバンクを破っていれば、栗山英樹監督の強気の采配は賞賛され、日本一への機運も一気に高まったことだろう。あと一歩のところで日本シリーズ進出を逃したとはいえ、終始にわたって攻めの投手起用を貫き、リーグ王者を苦しめた日本ハムの戦略は実に見事だった。

ソフトバンク・秋山監督が打った唯一のギャンブル。

 一方でソフトバンクはというと、救援に失敗したとしても森福允彦、五十嵐亮太、サファテらレギュラーシーズンを支えてきた投手を起用するなど、秋山監督はシーズン中の体制を崩すことはなかった。

 そのなかで唯一、強気に攻めたのが大隣のスクランブル登板だったのだ。

 指揮官はファイナルステージの前から「状態のいい選手から出す」と言っていた。実際、大隣は最終戦の「10.2対決」で好投するなど先発陣のなかでは最も安定していた。

 しかし大隣は今年の夏、国指定の難病である黄色靭帯骨化症から復帰したばかりだ。いくら安定しているとは言っても、年間でローテーションを担っていない病み上がりの選手を大舞台で、大事な初戦に加え今季誰も経験していない中4日で第6戦を任せるのはギャンブルに近い。

 だからこそ、秋山監督の起用は、かなり「攻めた」ものだったと言える。

 もちろん、指揮官が大隣へ抱く信頼感は、昨日今日できたものではない。長年にわたり彼が積み重ねてきたものを評価したからこそ、大英断を下すことができたのだろう。

【次ページ】 2010年に始まった、技巧派への転身。

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